27 おめでとう ページ27
あ･･････。
智君、褒められたり目立ったりするの苦手だから。
笑ってるけど困ったように眉を下げてるから、私は里穂ちゃんと智君の間にさりげなく立って椅子を引いた。
智君はすぐに気づいて、私の目を見ると、嬉しそうに笑って椅子に座った。
｢智君、あったかいうちに食べないと。智君の好きなラーメンだし。あ、お水取って来ようか？｣
｢いーよ。あんがと｣
本当は私もおめでとうって大声で言いたいんだけど。でもこれ以上智君を困らせたくないし。そろそろ立ち去らないと雰囲気的におかしいし。
･･････離れがたい。
葛藤していると、お箸をパキッて割った智君がこちらを見上げて悪戯っ子みたいに笑った。
｢Aちゃん｣
｢はい！｣
｢ありがと｣
えっと、えーっと、それはもしかして？
｢ちゃんと伝わったから｣
私のおめでとう、口に出してなくても伝わったの！？
う、嬉しい！
思わず涙ぐむ。
智君〜。
｢あのさ･････。さっきから俺ら完全に蚊帳の外なんですけど｣
二宮君の言葉にちらっと顔をあげた智君はくすぐったそうに笑った。
櫻井先輩が笑って言った。
｢俺らもおめでとうって言いたいのにさ｣
あれ？知り合い？って思ってたら、なんと智君はこの場にいる全員と知り合いだった。
知り合いっていうか、もう友達で。
二宮君繋がりで最近よくつるむようになってるって聞いてびっくりした。
イケメン5人組！
って言うか、私を差し置いて勝手に仲良くなってるってどういうこと!?
智君は私の大事な幼なじみなのに。
途端に沸き起こる対抗心で、私はムッとなった。
すると松本君が物凄く不満そうに言った。
｢あのさー、池谷って俺らの前と大野さんのの前じゃ全然態度違うくね？｣
｢大ちゃんとは扱いも違うよね｣
って言ったのは悲しそうな相葉君。
櫻井先輩が疲れたように言った。
｢池谷が智君の幼なじみだって言うのは知ってたの。でも、ここまでだとは思ってなかったよね｣
私はいよいよ赤面しはじめた。
そ、そんなに態度違った？
智君の顔を見るのが恥ずかしかった。
こんなの、気持ちがだだ漏れだって言ってるのと一緒だもんね？
でも智君は呑気にずずずってラーメン啜ってた。
･････。ああ、こういう人だったって思い出して笑っちゃう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 360人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお
| 作成日時：2018年3月19日 14時
