22 きゅっとする ページ22
｢選挙に負けて落ち込んでんのかと思ったんだけど･･････違うんだね｣
｢元々、頂点に立つよりはサブの立場の方が本領発揮できるタイプなので、副会長で満足してますよ。誰かのためにっていう方がやりがいあります｣
櫻井先輩は少し照れ臭そうにした。
｢それって、俺のために頑張るってこと？｣
｢生徒のために、じゃないんですか？｣
｢あっ、そうか！ かっこわりー！｣
頭を抱える櫻井先輩。
私は思わず笑ってしまった。
｢もちろん、櫻井先輩のためにも頑張ります｣
櫻井先輩はすぐに立ち直って私に握手を求めてきた。
･････もしかして、最初から落ち込んでなかった？今の全部計算で演技？
｢よろしく池谷Aさん｣
｢･･････よろしくお願いします｣
言って、そっと手を握ったら今度は本当に照れて。
｢なに、今の握手！･････きゅってした！｣
きゅってした、きゅってしたって言って、何故か生徒会役員全員で握手するはめになって。でもそのお陰で最初からみんな和気あいあいってなったから、もしかしてこれも櫻井先輩の計算なのかもしれなかった。
･･････侮れないな。
やっぱり櫻井先輩が会長で良かった。こんな人が副会長だったらなんか嫌だ。
きゅって握るのは智君の癖で、いつのまにか私も習得してしまっていただけなのに。
･･････智君のおかげでみんなと仲良くなれたよ？
伝えたいけど、もうできない。
彼女がいる智君とは･･････話す勇気なんてない。絶対泣いてしまうから。
胸の痛みで、私は唇をかむと窓の外に目をやった。
そんな私の姿を困った顔で櫻井先輩が見ていたなんて知らずに。
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作者名：あお
| 作成日時：2018年3月19日 14時
