21 会長 ページ21
9月、新学期が始まって、私は最初から絶望した。
智君が、3年生で一番美人で目立っている女の先輩と付き合い出したって噂が流れてきたからだ。
言葉もない。
あの時のごめんはこのことだったのかな。･･････私に謝る必要もないことだけど。
生きている感覚がしなかった。
体力作りにって始めていた朝のマラソンもすっかりやめてしまった。
生徒会の選挙もあって、いろいろ準備しないといけないのにまるで捗らない。
応援演説を引き受けてくれたクラスの子に、選挙に気合いが入らないことを謝ったら、なぜかびっくりした顔をされた。
それからその子とは仲良くなって、一緒にお弁当を食べるようになった。
｢池谷さんってもっと孤高の人って感じだったけど、嘘がなくて、素直な人だったんだね｣
･･････。私、どんなふうな印象を持たれてるんだろう。
まぁ仕方ないよね。派手めなイケてる素敵女子演じてたって思ったら急に全部取って、捨てて、勉強一筋になったんだもん。
･･････変人だよね。
行われた選挙では当然票が伸びなくて、私は副会長になった。
生徒会長は櫻井先輩だった。
顔合わせで私の顔を見るなり怯えた顔をする櫻井先輩。
怒ってる？って聞かれて、自分の頬を叩いた。
｢すみません。最近表情が固まり気味で。気をつけますね。不快な思いをさせて申し訳ありませんでした｣
｢いや、不快だなんて思ってないよ｣
｢あ、ご心配ですね。･････ありがとうございます｣
私がそういうと、櫻井先輩はどんぐりみたいな大きな目をパチパチッと音がしそうなくらい瞬きさせて、へぇって嬉しそうに笑った。
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作者名：あお
| 作成日時：2018年3月19日 14時
