19 イチゴチョコ ページ19
いつのまにか夕日は沈んでいて、町の向こうにオレンジ色の空を残すだけ。それも濃紺の夕闇にもうすぐしたら覆われて消える。
｢旅行帰りで疲れてねぇ？｣
｢全然！｣
食い気味に言ったら笑われた。
でも智君の笑い声が聞けて嬉しかった。
｢髪、素直んなったね｣
｢うん。･････染めたりカールさせたりするのってお金かかるから｣
｢そっか｣
･･････信じてくれてる？
｢化粧も？｣
やめたのわかったんだ。
･･･････どうしよう。嬉しい。
｢う、うん。同じ理由｣
でも、智君は今度はそっかって言ってくれなかった。
どうして？
｢弁当一人で食ってる？｣
｢あ･･････、うん。楽だから｣
そんなことも知っててくれただなんて。情けないけど･･････やっぱり嬉しい。
でも、また智君はそっかって言ってくれなかった。
押し寄せる不安。
そうこうしているうちにコンビニに着いた。
｢Aちゃんも甘いやつ買っちゃる。何がいい？｣
買ってくれるの!? 嬉しい！
｢えっと、あの、あ！智君は何を買うの？｣
｢えっとねー、これ｣
指差したものを見て嬉しくなった。
｢だと思った｣
それは智君の好きなイチゴチョコ。
｢え、なんでわかったの？｣
ふふって笑ってかわしたら、おいこらって、肘で脇をツンってされて顔から火が出そうになった。
カップルみたい･･････。
｢私もこれ｣
って一緒のを選んだら、黙り込む智君。
｢いいの？｣
意味がわからなくて首を傾げたら、智君は、ま、いいかって言ってレジに向かった。
･･････なんか変な智君。
智君に買ってもらったチョコを持って、来た道を戻る。
もうあたりは薄暗かった。
もう少し明るかったら良かったのに。そうしたら智君の綺麗な横顔がもっと見えたのに。
智君がぼそりと言った。
｢･･････ごめんな｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 360人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお
| 作成日時：2018年3月19日 14時
