14 さわやかなイケメン ページ14
握られた手が熱い。これはそのまま松本君の心の温度だ。
｢ごめんなさい｣
｢おい、ちょっとは考えろよ！｣
突っ込んで来るのが早くてちょっと笑ってしまった。
｢なんだ、笑えるんじゃねーか。･････可愛いじゃん｣
この人凄いな。多分今までモテまくってきたんだろうな。私みたいな見かけだけじゃなくって、中身もイケてる男子ってやつ。
｢しゃーねーな。まぁ諦めるには早い。こっからか｣
にこっと笑った松本君。
多分、明日も私が気を遣わないでバイトに専念できるよう、明るく振る舞ってくれているんだと思う。
カッコイイね、松本君。
でもそれは言えないから。
｢リーダー、よろしくね｣
タメ語で返してみると、おって嬉しそうに笑った。子供みたいな笑顔だった。
まだ、全然鮮明に思い出せる智君の笑顔と少し重なる。
･･･････。
思わず松本君をじっと見つめた。
｢なに？｣
ううんって首を横に振った。
･･････多分、この子も童貞じゃないんだろうな。うん、多分、絶対。
ため息が、こぼれる。
お盆が終わって、新幹線で妹と二人、帰省していた東北のおばあちゃんの家から戻ってきた暑い日の午後。
駅でうずくまってるお年寄りを見つけて駆け寄った。
｢雪ちゃん、あそこでこれ持って待ってて。動いちゃダメよ｣
小学生4年生の妹に荷物を持って貰って、駅員さんのいる改札近くで立つよう指示してからお婆さんのところに向かうと、同時に反対側からも人がやってきた。
｢具合を悪くされたんですか｣
ほぼ声が重なって、一瞬、相手と見つめ合った。
すると向こうは私を見てアッと言いかけたけど、やめて、お婆さんの背中をさすった。
私はお婆さんの持っている鞄に目を止めた。薬袋が見えている。
｢これ･････｣
｢え？あ、これ？｣
男の子は薬袋に気がつくと、それを手に取った。
結局お婆さんは持病の発作が起きていて、薬を飲みたいのに手が震えて飲めずに困っていたところだった。
薬を飲んだお婆さんは落ち着きを取り戻し、駅員さんに連れられて、お身内の人がくるまで医務室で待つことに。
大事に至らずにほっとした。
私は待たせていた妹のところへ戻った。
｢お待たせ。帰ろうか｣
｢うん！｣
｢待って｣
振り返るとさっきの男の子。
･･････イケメンだ。爽やかで明るいイケメン。
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作者名：あお
| 作成日時：2018年3月19日 14時
