102 ビジネスライク ページ4
岩田さんは細い眉を吊り上げた。
｢普通、喜んで受けとるでしょ？｣
｢辞めたいの？｣
私の問い掛けに言葉につまった岩田さんを見て、私は手探りしながら語りかけた。
｢辞めて、岩田さんが前に進めるのなら正式に受け入れます。でも何の解決にもならないのなら、もう少しここで頑張ってみたら？｣
岩田さんは眉を潜めた。
｢･･････どうして私みたいなのを引き止めるのよ。引き止めるのも仕事のうちだから？でも私みたいなのがいなくなることは、働きやすくなって、あなたにとっていいことなんじゃないの？｣
｢そう、好きな仕事だからよ。部長に頼まれたからには、あなたに辞めて貰っては困るの。引き止める理由はもう言ったけど、仕事だから、それだけよ。部長にもう面倒は見なくていいって言われるまで、全力で面倒を見させて貰うからそのつもりでね｣
｢私が何をやっても？｣
｢上司がストップを出さない限りは全力で面倒見るし、フォローします。このナースステーションにいる誰が見限っても私は見限らない｣
仕事だから岩田さんの面倒を見る。そこに嘘はない。
けど、人間だから一緒にいれば仕事の垣根を越えた感情もやっぱり生まれてしまう。良くも悪くも。でも岩田さんにはあくまでもビジネスライクな言い方をした。感情を前に出しても今の岩田さんには響かない気がしたから。
岩田さんはしばらくじっとしていた。顔をあげて、｢全力って、鬱陶し過ぎるわ｣って鼻を鳴らされたけど、その声が弱っていたから私は安堵して笑った。
それは、岩田さんがこちらに歩み寄って来た瞬間だった。
｢今私のことを引き止めたら、また大野先生のこと、襲うかもしれませんよ｣
言われても、もう、岩田さんの言葉に黒い影は感じられなかった。
｢人の気配のないところで寝ないでってお願いしたから大丈夫よ｣
｢起きててもやり方次第では落とせますよ？｣
｢それは困ったな。･･････まだ秘密なんだけど、いずれ結婚するの｣
息をのむ岩田さん。
岩田さんにばらしたのは私の仕返しだ。
黙っておける？
窺うように見ていたら、酷い性格してますよねって毒づいてきたけど、その後、私達の結婚の話が院内に広まることは･･････なかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 800人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - うさこさん» うさこ様、コメントありがとうございます！なるほどー！その通りですね！素晴らしい観察力をお持ちですね！話書いて下さったら絶対読みますよ!?私も腕掴まれて、怒んなって！って宥められたい。ばーかって照れ臭そうに言って貰いたい。これからもよろしくお願いします。 (2019年3月19日 8時) (
レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - でも相手の勘違いからの喧嘩とか、誤解解くためなら追いかけてくれないかなー。腕とか掴まれたいです(笑)長くなりましたが、これからもお話楽しみにしてます！ (2019年3月18日 19時) (レス) id: bf6cb008e1 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - aoさん、はじめまして(*^^*)とても素敵なお話でした。智くんと主人公の幸せな様子に何度もニヤつきました(笑)あとここでなんですが、喧嘩したら追いかけてくるかどうか…基本的に喧嘩はあまりしなさそうだから、喧嘩になるまで自分の主張があるなら追いかけなさそう(笑) (2019年3月18日 19時) (レス) id: bf6cb008e1 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - 智真さん» 智真様、コメントありがとうございます。無事完結できて嬉しいです。クラクラさせられて良かったです。ふふふ。今連載している高校バージョンが終わったら、二人の離島でのその後のおまけを用意しています。よろしければまたご覧下さいませ。UPはクリスマス頃かな？ (2018年12月20日 13時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - 初めまして！完結おめでとうございます！！！智さんに何度もクラクラさせられたし、主人公ちゃんと智さんの2人のやりとりが、幸せすぎてお腹いっぱい、胸いっぱいです(о´∀`о)素敵なお話ありがとうございました！！！ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ao
| 作成日時：2018年11月3日 18時
