29 別れ ページ29
｢どうしたんですか？さぼりじゃないですよね｣
笑って言ったら、珈琲を一口啜って、翔君も明るく言った。
｢さっき急患を診てきたとこですー｣
｢ご苦労様です｣
椅子に座って、奥の翔君に向き合う。すると翔君から笑顔が消えた。
｢Aさ、大野先生と何かあんの？｣
思わず珈琲を吹き出しそうになった。
｢･････どうして？｣
｢あるんだ？｣
確信に満ちた眼差しでじっと見つめられて、短くため息を吐き出した。
｢頭のいい人って本当に嫌ね。やっぱり結婚するのは医者以外にする｣
私の何気ないその言葉に翔君が目をそらしたのが気になった。
｢どうかしたの？ ああ、恋人と結婚の話が持ち上がってるとか？｣
｢･････あいつとは別れた｣
｢え･･････｣
製薬会社のお嬢さん。上品で賢くて従順で、何より顔も性格も可愛かった。凄くお似合いだったのに。確か、2年近く付き合ってなかった？
翔君は自嘲気味に笑った。
｢いろいろあってね。二週間前に放浪画家と駆け落ちした｣
息をのむ。
｢冗談じゃなくて？｣
｢はぁー･･････｣
長いため息を吐いた翔君の撫で肩が滑り台みたいに下がってるから、本当だと分かって、急いで励まさなければと焦った。でも、うまい言葉が出て来ない。
勝ち組の翔君のこんな姿、見たことなかった。
｢松本先生達は知ってるの？｣
｢いや。でもそのうち病院中に広まるだろ｣
それはそうだ。二人の恋はみんなの祝福の中にあって、結婚秒読み状態だったんだから。相手は超のつく大金持ちのお嬢様で、駆け落ちしたとなれば週刊誌に掲載されても不思議ではない程の相手だった。
｢親父が慰謝料がわりにあっちの親に便宜をはからせるって息巻いてるよ｣
｢櫻井先生･･････｣
｢A、今だけ昔みたいに翔君って呼んでくれない？俺、あれ好きだったんだよね｣
別れてから、公私の区別をつけるために二人きりでももう名前を呼ばないようにしていた。
｢･･･････まだ破局して二週間なんでしょ？ 彼女、戻って来そうなことはないの？｣
お嬢様が放浪画家にどこまで着いて行けるのだろうか。
すると翔君はくすっと笑った。
｢それがさ、あいつ凄いガッツあんの。多分あれは一生帰ってこないな｣
その優しい笑みから、翔君が彼女のことを本当に愛していたのだと分かった。
｢翔君･･････｣
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ao(プロフ) - あゆねさん» あゆね様ありがとうございます！私も羨ましいです。こんな元彼がいたらいい思い出作れそうです。頑張ります。感謝です。当分 (2018年11月15日 14時) (
レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
あゆね - このお話がとても好きで、毎日読んでいます！主人公ちゃんがほんとに羨ましいですね(笑)これからもaoさんのペースでがんばってください！応援してます！ (2018年11月12日 0時) (レス) id: 1048fe7101 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ユミさん» ユミ様、読んでいただけて感謝です。二人に挟まれて羨ましい限りです。今後もご期待下さいませ！ (2018年11月11日 7時) (レス) id: 1822afa89a (このIDを非表示/違反報告)
ユミ(プロフ) - 今日も続きが読めて嬉しいです！翔くん出てきたー！と思ったらかなりグイグイでキャー！です。智ってば寝てる場合じゃないのにー！とニタニタしておりますよ（笑） (2018年11月10日 20時) (レス) id: 5a2a163833 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ユミさん» ユミ様コメントありがとうございます〜！新作も萌えを追求していますので、是非ご一緒にときめいて下さい。気に入ってくださるといいのですが。ありがとうございます！ (2018年11月8日 20時) (レス) id: 1822afa89a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2018年11月1日 14時
