19 電話 ページ19
コール音は、智の胸から聞こえて来る。
智は私をそっと離した。けれど電話には出ようとしない。
｢電話、早く出ないと切れちゃう｣
｢こんな時間にかけてくんのろくな相手じゃねぇし｣
11時過ぎ。でも一度切れてまたすぐに掛かってきたコール音に、智は仕方なさそうにポケットから電話を取り出した。
でも画面を見て目を見開く。
｢さ･･････｣
言いかけて、私をちらりと見た。明らかに気まずい顔になったから、その続きが分かった私はスッと正気に戻った。
｢早く、出て？｣
聞いちゃいけないと、逃げるように智から離れた。
きっと、小百合さんだ。
恋人に聞かせる甘い声なんて聞きたくなかった。自分との違いを思い知らされるから。
どうしてキスなんてしてしまったの。しかもあんなキス。
思い出しただけで容易に芯が疼く。
････これ以上一緒にいちゃいけない。取り返しのつかないことになる。もう、帰らなければ。
離れたところで振り返ったら、ちょうど電話を終えた智が私を見ていた。
｢帰るね！｣
人通りの少ない路地裏。でも離れていたから聞こえるように大きめの声で言ったら、同じような大きさで智が返してきた。
｢送ってく！｣
後ろに下がりながら首を振ったのに、躊躇いなく走り寄ってきて私のそばに立った。
もう、何にもしないからって言って、大通りに出てタクシーを拾い、私を先に乗せてくれた。
その一連の流れがスマートで、二人の間に流れた長い年月を改めて感じさせられた。
｢怒ってる？｣
タクシーの中で躊躇いがちに聞いてきた智。
その言い方が心細そうで、それまで、車窓を見ながら智って大人になったんだなって感慨深く浸っていたのに、つい吹き出してしまった。
｢そういうこと聞く？｣
｢ルールとか、わかんねぇもん｣
唇を尖らせた。
｢場数こなしてそうなのに？｣
｢そんな遊ぶ暇ねぇわ｣
まぁ、それはそうだけど。
小百合さんとずっと付き合ってきたの？ならもう10年以上になるよ？･･････結婚、そろそろするのかな。
智は言いにくそうに口を開いた。
｢そっちこそ･････｣
｢え？｣
｢なんでもない｣
言いかけた言葉をやめてしまって、代わりに私の手を握って来た。
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ao(プロフ) - あゆねさん» あゆね様ありがとうございます！私も羨ましいです。こんな元彼がいたらいい思い出作れそうです。頑張ります。感謝です。当分 (2018年11月15日 14時) (
レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
あゆね - このお話がとても好きで、毎日読んでいます！主人公ちゃんがほんとに羨ましいですね(笑)これからもaoさんのペースでがんばってください！応援してます！ (2018年11月12日 0時) (レス) id: 1048fe7101 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ユミさん» ユミ様、読んでいただけて感謝です。二人に挟まれて羨ましい限りです。今後もご期待下さいませ！ (2018年11月11日 7時) (レス) id: 1822afa89a (このIDを非表示/違反報告)
ユミ(プロフ) - 今日も続きが読めて嬉しいです！翔くん出てきたー！と思ったらかなりグイグイでキャー！です。智ってば寝てる場合じゃないのにー！とニタニタしておりますよ（笑） (2018年11月10日 20時) (レス) id: 5a2a163833 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ユミさん» ユミ様コメントありがとうございます〜！新作も萌えを追求していますので、是非ご一緒にときめいて下さい。気に入ってくださるといいのですが。ありがとうございます！ (2018年11月8日 20時) (レス) id: 1822afa89a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2018年11月1日 14時
