49 風邪 ページ49
斗真は相手も酔ってのことだから仕方ないって理解してくれたって言ってたけれど、斗真のことは理解して許していても、私のことは許していないってすぐに分かった。
｢あなたのせいで生田君、ずっと悩んでるんだから。結婚しないんだったらさっさと別れてよ｣
｢荻田やめろよ｣
斗真は止めようとするけれど、彼女はそれを振り払って前に進み出ると、私の肩を掴んできた。
爪が肩に食い込む。
震えているのは緊張から？それとも興奮？･････悲しみ？
｢ごめん、A｣
斗真の悔しそうな顔を見て、私はいよいよ腹をくくる時が来たんだと実感した。
まわりのお客さんから凄く見られていて、かなり目立っていたけれど、こんな時なのに酷く冷静な自分が、すべてを物語っていた。
お店の人がタオルを貸してくれた。
｢ご迷惑をおかけしてすみません｣
謝りながら受け取って、私は荻田と呼ばれた女の子に向き直った。
｢私はあなたのことを何も知りません。だから言えることが何もなくてごめんなさい。このことは、彼と私で話をするので、また彼から聞いてください。斗真、彼女を連れて出てね。私は化粧室で身体を拭いてから出るから｣
頭を下げたら、頭上で舌打ちが聞こえた。
･･････強いな、彼女は。
私が先に店を出ても良かったんだけど、二人が周囲の視線に晒されるのは可哀相だと思ったから先に出てもらおうとしたのに、必要なかった？
斗真は羽織っていたシャツを脱ぐと、私の肩に掛けてくれた。
そんなことをしたらまた彼女が悲しむのにって思ったけれど、水を掛けられた体は思いのほか冷えていたみたいで、布で覆われた肩があたたかくて、シャツの合わせを掴んで、今になって泣きたくなった。
｢タクシーで帰れよ｣
｢ええ｣
化粧室に行こうと背中を向けたら、斗真の焦った声が聞こえて、振り返るともう一度彼女が私に向かってコップの水を掛けようとしているところで、寸前で斗真が止めてくれていた。
･･････凄いな。こんなに面と向かって恨まれたことなんて生まれて初めてだ。
斗真に引っ張られるようにして出て行った彼女。でも、斗真が掴んだ手を振りほどこうとはしなかった。
残された私は、たくさんの好奇の視線の中で、一人化粧室に向かった。
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ao(プロフ) - ねこっぱちさん» ねこっぱち様。レス遅くなってしまいました。失礼しました。コメントありがとうございます。今も読んで下さってますでしょうか。社長編起きに召しました？私もここの事務員なりたいです！これからもよろしくお願いいたします。 (2018年8月2日 15時) (
レス) id: e96312c6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこっぱち(プロフ) - お気に入り1番目Σ(ﾟ艸ﾟ〃)思わずコメントしてしまいました！いつも楽しく読ませて頂いてます。この代理店事務員もう1人雇ってくれないかしら〜♪ (2018年7月13日 14時) (レス) id: 8896252b64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あお
| 作成日時：2018年7月11日 5時
