44 手持ちぶさた ページ44
｢ただいまー｣
櫻井さんが外から帰ってきた。
いつものようにジャケットを受け取りに給湯室を出たら、春香ちゃんがもう受け取っていた。
｢櫻井さんって、スーツ脱いだらびっくりしますよね｣
言いながら、いつも私がするようにハンガーに掛けて、ブラシをかける。
｢どういうことだよ｣
｢撫で肩が予想以上で｣
｢おまえなぁ！ 学校の先生に人の欠点を堂々と言っちゃいけませんって習わなかったか｣
いいながら、両手で春香ちゃんのこめかみをグリグリ押さえる櫻井さん。
｢いた、痛たたた！そんなことしたらコーヒー入れてあげませんよ！｣
｢結構ですぅ。Aさんに入れて貰うからぁ｣
｢別に撫で肩が欠点だなんて言ってないですよ？櫻井さんは完璧過ぎるから、そういうところもないと逆にモテないって思ってます｣
｢ふぅん。って、やっぱりそれ欠点だって言ってるのと一緒だろ！春香、おまえいい加減にしとけよ。後で俺様の有り難い撫で肩を揉ませてやる｣
･････私とはしない軽妙なやりとり。･･････ちょっと羨ましい。
私は途中で見るのをやめて給湯室に戻って飲み物の準備をした。
事務所のみんなは、春香ちゃんのことを｢春香｣って呼び捨てで呼ぶ。私はいつまで経っても苗字呼びなのに。
それに春香ちゃんとはスキンシップも多くって、以前は私にも頭を撫でるくらいの触れ合いがあったのに、斗真とよりを戻して以来、それさえもなくなった。
春香ちゃんは懐に飛び込んで来るのが早いの。そしてそれがちっとも嫌じゃない。むしろ軽くて心地いいから抱き留めてあげたくなってしまう。
人徳なんだろうなって思う。
春香ちゃんは現場の仕事も忙しいのに、私の仕事もちゃんと見ていて手伝ってくれる。
･･････実は最近少し手持ちぶさた気味な程だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 775人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - ねこっぱちさん» ねこっぱち様。レス遅くなってしまいました。失礼しました。コメントありがとうございます。今も読んで下さってますでしょうか。社長編起きに召しました？私もここの事務員なりたいです！これからもよろしくお願いいたします。 (2018年8月2日 15時) (
レス) id: e96312c6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこっぱち(プロフ) - お気に入り1番目Σ(ﾟ艸ﾟ〃)思わずコメントしてしまいました！いつも楽しく読ませて頂いてます。この代理店事務員もう1人雇ってくれないかしら〜♪ (2018年7月13日 14時) (レス) id: 8896252b64 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお
| 作成日時：2018年7月11日 5時
