57 大人 ページ10
息をのんだ。昨日までの夕子さんには言わなかったけど、今の夕子さんになら言ってもいい気がした。
｢･･････はい｣
｢そっか｣
夕子さんは智といると子供っぽくなるけど、一人でいるととても大人だった。
｢でも残念。智は私には逆らわないんだな〜。負い目があるからね｣
｢今の仕事に就職するきっかけを作った？｣
瞬間、夕子さんは弾けるように笑った。
｢就職って！私はリクルート活動してたわけじゃないわよ。あなた本当に書き手なの？｣
額を押さえて笑う癖が智と一緒で切なくなった。
｢書き手だってわかったのはね、智の部屋に珍しく文庫本があったから。あなたの名前の。でも半分も読んでなかったけどね｣
･･････まぁそういう人だよね智は。でも、どういう経緯にしろ持っていてくれただけでも凄く嬉しい。
｢智は知らないけど、会う前から私、そういう世界にいたのよ？｣
ハッとして夕子さんを見ると、とても綺麗に笑ってた。潔くて強い。
｢だからただ元に戻っただけ。浮気されて傷ついたせいじゃないから負い目を感じることもないの。でもね、智がいつまでも私の欲しいものをくれないから教えてあげないの。･･････このこと、あなたから智に話してもいいわよ？じゃあね｣
言って、姿勢のよい後ろ姿を見せて去っていく夕子さん。
｢どうすんの？｣
振り返ったら雅紀君がいた。
｢聞いてたの？｣
｢ごめん｣
素直に謝る雅紀君を見ていると優しい気持ちになる。
｢凄い情報だね。御手柄だよ？｣
私は何もしてない。夕子さんが何かしらの覚悟を持って、たまたまそこにいた私に喋っただけだと思う。
｢これ聞いて、でも智は幸せになれるのかな｣
なんとなく、そうは思えなかった。
そんな単純なものじゃない気がしたの。二人の間にあるもの。二人にしかわからないもの。
雅紀君が、私の頭を大きな手でくしゃくしゃと混ぜて、一転して明るく笑った。
｢俺ねー、Aのお色気攻撃を避ける方法見つけたの！｣
まるで珍しい虫でも捕まえたみたいに楽しそうに言う。
｢Aを妹扱いする！こうやって、よしよしって、触っちゃいけないって思わずに自分からどんどん触っていくことにする。そうするとお色気から逃れられて、友達として仲良く出来ると思う。おーちゃんのことも応援できるように･･････なる！なってみせる！俺は出来る。出来る子なんだ！｣
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ao(プロフ) - 名無し30041号さん» 名無し30041号様、ご感想ありがとうございます！凄くいいところって言って貰えて、思わず自分で読み返しました。嬉しいです。次回も内容濃いいですのでお楽しみに！ (2018年6月8日 6時) (
レス) id: 662b179892 (このIDを非表示/違反報告)
名無し30041号(プロフ) - 初コメ失礼します。毎回読ませていただいています。すごく面白くて大好きです！今回すごく良いところで終わってて続きがすごく気になってます！更新楽しみにしてます！！ (2018年6月8日 6時) (レス) id: b3503f4c8d (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - 小春柴犬さん» 小春柴犬様。ありがとうございます〜。続投大歓迎です。倉庫のシーンは私の中でこの作品の中でＴＯＰ３の萌え所です。楽しんで下さいねー！ (2018年6月7日 8時) (レス) id: 662b179892 (このIDを非表示/違反報告)
小春柴犬(プロフ) - それにしてもお髭な大ちゃんもワイルドで素敵なんでしょうね（妄想）ヒロインちゃんも素敵なお話書けるといいなぁ。潤君ニノ雅紀君皆可愛い!先輩爽やかです。モテモテ羨ましい!続投すみませんm(_ _)m (2018年6月6日 16時) (レス) id: d59263fbc6 (このIDを非表示/違反報告)
小春柴犬(プロフ) - あおさん更新お疲れ様です!お金じゃなくて愛情が欲しかったんですね夕子さん。子供って何!気になる…逃走しちゃいましたね（笑） (2018年6月6日 16時) (レス) id: d59263fbc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あお
| 作成日時：2018年5月25日 9時
