56 倉庫 ページ9
指の怪我なんてものともせずに、無事セレモニーを終えた智は、その日から暫く倉庫にこもる生活が続いた。
お盆が終わって数日たっても姿を見せない智。
心配してたら、みんな、これが智の当たり前だって言うの。夢中になったら寝食を忘れて没頭するし、もともと食も細い方だという。俗世のことに興味が薄いんだというそんな話を聞いていたら、仏像を思い出した。
潤君のお父さんは無事手術を終えて回復に向かっていて、今年は無理だけど、来年の海の家は開けられそうだと聞いて胸を撫で下ろした。
お父さんが無事だったこともとても嬉しいけど、潤君だって一流レストランのオーナーシェフだ。ランチ営業にも出られていない今の状態はとても大変だったと思う。
店を手伝ってくれている友達として潤君のお父さんのお見舞いに行ったら、なぜか恋人と勘違いしてて大慌てで訂正した。
でも隣で舌を出してる潤君。
確信犯だよね？
智がこもっている最中、夕子さんが何度か店にやってきた。
智がこもっていることを伝えると、そっか･････と言って、来る度だんだん元気をなくして帰って行った。
ある時、｢電話してみたらいいのに｣って私が言ったら、瞬きして鼻で笑われてしまった。
｢集中してる時は電話に出ないから。それに邪魔したくないもの｣
それで、私は夕子さんと智の過ごしてきた長い年月を感じて、敵わないって単純に思った。
ずるいって思ってただけの夕子さんの存在が大きく見えた。
｢どうしてお金を貰うの？｣
触れてはいけないことだと思っていたんだけど、言わずにはいられなかった。
すると、夕子さんは怒らなくて、彼方の夕暮れ間近の水平線を見ながら自嘲気味に微笑んで言った。
｢一番欲しいものをくれないから。･････それくれたら、お金なんて全部返してあげるのに。買った鞄も、宝石も、マンションも、車も全部返すのに｣
いったい智はどれだけお金を渡しているんだろうって青ざめかけたけど、夕子さんが消えてなくなりそうなくらいはかなげだったから、強めに言った。
｢車は返さなくていいと思う！｣
夕子さんが不思議そうに私を見た後、くすっと笑った。
｢｢免許がないから｣｣
声が重なって、二人で笑い合った。
｢もしかして、あなた･･････えっとAさん？･･････智のことが好きなの？｣
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ao(プロフ) - 名無し30041号さん» 名無し30041号様、ご感想ありがとうございます！凄くいいところって言って貰えて、思わず自分で読み返しました。嬉しいです。次回も内容濃いいですのでお楽しみに！ (2018年6月8日 6時) (
レス) id: 662b179892 (このIDを非表示/違反報告)
名無し30041号(プロフ) - 初コメ失礼します。毎回読ませていただいています。すごく面白くて大好きです！今回すごく良いところで終わってて続きがすごく気になってます！更新楽しみにしてます！！ (2018年6月8日 6時) (レス) id: b3503f4c8d (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - 小春柴犬さん» 小春柴犬様。ありがとうございます〜。続投大歓迎です。倉庫のシーンは私の中でこの作品の中でＴＯＰ３の萌え所です。楽しんで下さいねー！ (2018年6月7日 8時) (レス) id: 662b179892 (このIDを非表示/違反報告)
小春柴犬(プロフ) - それにしてもお髭な大ちゃんもワイルドで素敵なんでしょうね（妄想）ヒロインちゃんも素敵なお話書けるといいなぁ。潤君ニノ雅紀君皆可愛い!先輩爽やかです。モテモテ羨ましい!続投すみませんm(_ _)m (2018年6月6日 16時) (レス) id: d59263fbc6 (このIDを非表示/違反報告)
小春柴犬(プロフ) - あおさん更新お疲れ様です!お金じゃなくて愛情が欲しかったんですね夕子さん。子供って何!気になる…逃走しちゃいましたね（笑） (2018年6月6日 16時) (レス) id: d59263fbc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あお
| 作成日時：2018年5月25日 9時
