64 逃げる ページ17
バタバタと出て行く先輩を見送って、私も落ち着かなくて暫く倉庫の中をうろうろしていたんだけど、智の造ってた彫像と目が合った気がして立ち止まる。
巨大な扇風機の回転する音だけが響く静かな倉庫の中で、主のような佇まいを醸し出している像。
｢すごいなぁ･･････｣
椅子を目の前に移動させて暫くじっと見上げてると、ふと、倉庫の隅で煙りが上がってるのに気づいた。
火事じゃないよねと思いながらそっと近づいたら、隅っこに座って煙草を吸ってる智と目が合ってびっくりした。
でも智の方は、しまったみたいな顔をしてたけど、笑ってるからほっとして近づいた。
｢なんでこんなとこに･････先輩外に探しに行っちゃったよ？｣
｢だからだし｣
つまり逃げたんだね。
私は苦笑して智の隣に座った。すると慌てて煙草を消したから、大丈夫だよって言ったのに、休憩終わりって微笑んだ。悪いことしたって離れようとしたら、大丈夫って腕を掴まれて･･････恋する心臓が音を立てた。
智が私の腕を掴んだのは一瞬で、すぐに離した。
でも、思ったよりも熱い手の温度が私にも小さな熱を燈した。
｢みんな元気？｣
｢元気だよ。お休みとかとらないの？一度帰ってきたらいいのに。もしかして主催者の人に見張られてるとか？｣
｢んはは、ないない。でもマネージャーみたいなのしてる奴がいて、たまに顔出すけど｣
｢そんな人いたんだ？｣
｢事務作業とか苦手だし。前に、仕事引き受けすぎて何が何だかわかんなくなったから、選んでもらってんの｣
｢凄いね｣
｢ん。有り難い。こんなんに仕事くれて｣
全然こんなのじゃないよって思ったけど、それで智が喜ぶような気がしなかったから、一緒になって有り難いねって言っておいた。
遠くで、どこかの工場から響く金属音と、波止場で鳴らす船の汽笛が聞こえて来る。
突然、智があーって悔しそうな声をあげたから、びっくりして顔を覗き込んだ。すると目が合った智は驚いて、私から逃げるようにお尻で後ろに下がった。
｢あんま近づかんで。･････禁欲中だからさ、そばに来られるとヤベーの。凄いね、そのフェロモン。反応しちゃう｣
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ao(プロフ) - 名無し30041号さん» 名無し30041号様、ご感想ありがとうございます！凄くいいところって言って貰えて、思わず自分で読み返しました。嬉しいです。次回も内容濃いいですのでお楽しみに！ (2018年6月8日 6時) (
レス) id: 662b179892 (このIDを非表示/違反報告)
名無し30041号(プロフ) - 初コメ失礼します。毎回読ませていただいています。すごく面白くて大好きです！今回すごく良いところで終わってて続きがすごく気になってます！更新楽しみにしてます！！ (2018年6月8日 6時) (レス) id: b3503f4c8d (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - 小春柴犬さん» 小春柴犬様。ありがとうございます〜。続投大歓迎です。倉庫のシーンは私の中でこの作品の中でＴＯＰ３の萌え所です。楽しんで下さいねー！ (2018年6月7日 8時) (レス) id: 662b179892 (このIDを非表示/違反報告)
小春柴犬(プロフ) - それにしてもお髭な大ちゃんもワイルドで素敵なんでしょうね（妄想）ヒロインちゃんも素敵なお話書けるといいなぁ。潤君ニノ雅紀君皆可愛い!先輩爽やかです。モテモテ羨ましい!続投すみませんm(_ _)m (2018年6月6日 16時) (レス) id: d59263fbc6 (このIDを非表示/違反報告)
小春柴犬(プロフ) - あおさん更新お疲れ様です!お金じゃなくて愛情が欲しかったんですね夕子さん。子供って何!気になる…逃走しちゃいましたね（笑） (2018年6月6日 16時) (レス) id: d59263fbc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あお
| 作成日時：2018年5月25日 9時
