スリザリン寮へ ページ44
皆が歌い終わった後、ダンブルドア校長先生は感激の涙を拭う。
「ああ、音楽とは何にも勝る魔法じゃ。―――――さあ、諸君、就寝時間、かけ足！」
スリザリンの一年生は監督生であるファーレイに続いて、途端にまた騒がしくなった人込みの中を通り、大広間を出て、右側の扉に向かった。
そこからほとんど階段を下った。
どこまで下っていくのだろう……と思った時、ファーレイの演説を思い出した。『談話室の窓はホグワーツ湖の水中に面しているわ……』つまり、スリザリン寮は地下にある、ということだ。
しばらく階段を下りたり、薄暗い廊下を通ったりしたが、ようやく立ち止まった。しかし、そこは湿ったむき出しの壁が並んでいるだけ。
「ディガリス ファング」ファーレイが一声そういうと、壁だと思っていた石の扉がするすると開いた。
「今のがこれから二週間の合言葉よ。さっきも言ったけど、他の寮生には絶対に教えちゃダメ。勿論、連れてきても、ね」
入って初めに目に飛び込んだのは、談話室らしき部屋。細長い、天井の低い地下室で、壁と天井は荒削りの石造り。天井から丸い緑がかったランプが鎖でつるされている。そして大きく重そうなカーテンがある。きっと開けば向こう側は湖の中だろう……。
しかし、不思議と怖いとは感じなかった。
それは組み分け帽子がAにピッタリと言ったから、本当にピッタリで安心するのかもしれないし、前の方にある、彫刻が施された、とても大きな暖炉とその周りの椅子が温かみを出しているからかもしれない。
ファーレイの指示で、女の子は女子寮に続くドアから、男の子はもちろん男子寮に続くドアから、それぞれの部屋に入った。
女子寮に続くドアの向こうは、ずっと続きそうなほど長い廊下。途中途中ネームプレート付きの扉が付いていて、そして途中途中、更に下に続く階段があった。
「貴女達はラッキーなのよ」
後から入って来たファーレイに、そう言われ、首を傾げれば、頭を撫でられる。
「貴女達の代は、談話室が近いから、すぐ出れるけど……今の先輩方はいちいち何段も階段を登らなきゃいけないからね」
なるほど。確かにそれはラッキーだ。素直にうなずいといた。
更に下へ続く階段を下りたら、先輩方の部屋があるということか。
しばらく自分のネームプレートを探していれば、ようやく見つかった。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年4月25日 18時
