ありえない不思議 ページ37
ふと、Aは顔を上げたのだが、そのタイミングが最悪だった。ひぇ……と息をのんで、ハーマイオニーも気が付く。
そこには――――天井近くを通り過ぎてきたその者たちは、真珠のように白く、なんと少し透き通っている。
まさか、と思ったが彼らは、ゴーストだ。
彼らは新入生には目もくれず、何かを話し合っている。
「もう許して忘れなされ。彼にはもう一度チャンスを与えましょうぞ」小柄な修道士が言う。
「修道士さん。ピーブスには、あいつにとって十分すぎるくらいのチャンスをやったじゃないか。我々の面汚しですよ。しかも、ご存じのように、やつは本当のゴーストじゃない――――おや」
ここでようやく、彼らはA達に気が付く。「君達、ここで何してるんだい」
ひだ襞がある襟のついた服を着て、タイツをはいたゴーストが、急に一年生たちに気が付いて声をかけた。しかし、新入生たちは、驚いて何も返せない。
「新入生じゃな。これから組み分けされるところか？」
しかし、彼らは慣れているのか、太った修道士が優しく微笑みかける。それでやっと新入生の何人かが黙って小さくうなずいた。
それを見て修道士が「ハッフルパフで会えるとよいな」とまた微笑んで言った。
「わしはそこの卒業生じゃからの」
「さあ行きますよ」
再度、扉が開いて、マクゴナガル教授が入って来た。ゴーストたちが一人ずつ壁を通り抜けてフワフワ出て行った。
「組み分け儀式がまもなく始まります」
ゴクリ、とAは唾と飲み込む。急に喉が渇いてきた。そういえば、身なりをあまり整えていない。
一列になってついてきたください、と、いう教授の命令通り、新入生たちは大人しく一列になる。Aはまたもやハーマイオニーに引っ張られるように、彼女の後ろに着いた。
足が鉛のように重い。しかしそれでも足は動く。全く、不思議な事だ。
一年生は部屋を出て、再び玄関ホールにもそり、そこから二十扉を通って大広間に入った。
大広間は、まさに、圧巻だった。はじめに感想が浮かぶとすれば、それはきっと「不思議」だろう。Aは口を間抜けにもポカンと開けながら上を見る。
何千というろうそくが浮かび、天井があるはずのそこには、黒い空に星までもが瞬いている。
「本物の空に見えるように魔法がかけられているのよ」前のハーマイオニーがAに近寄って教えてくれた。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年4月25日 18時
