本当の仕事 ページ4
こわごわと顔をあげれば、まだにっこにこの両親と目があう。
不思議が喉元までつき上がって、しかし、それ、がありすぎて、下がってしまう。
細い喉から、やっとこさ出てきたのは、「まほう？」だけ。
それでも、それだけでも両親は、娘がなにを疑問に感じたか、わかってくれたようだった
そうだね、と言って、父は話してくれた。
魔法のこと、自分の仕事のこと。
母は、魔法省という所で、「神秘部 アジア科 日本グループ」で働き、父は同じく魔法省で、「闇払い」だった。
その他にも、その世界のこと、ホグワーツ魔法魔術学校のこと。
そして、恐ろしいこと。
「恐ろしいこと」は、でも、余り話さなかった。大まかなことだけを話した。
「ホグワーツ魔法魔術学校に行ったら……さっき話したことをきっと、魔法史かなんかで、教えてくれると思うわ」
それまでは、詳しいことは知らなくて良いと、母は悲しそうに顔を歪ませた。
おおまかな、あらすじだけでも随分と、胸くそ野悪くなる話だった。
父が苦しそうに話したのは、Aと同い年の、少年のこと。内容が内容で、少年の名前の方が霞んてしまった。
すべて、ほとんど話し終えたであろう、その時には、ほかほかハンバーグな、ヒエビエハンバーグに変わっていた。
これも、魔法だろうか？
それと、もう二つ。気になったことがある。
箸でヒエビエハンバーグを突いて口に運びながら、聞いてもいいのだろうか、と母を見た。
しかし、母はどこ吹く風。こちらから言わなければ、きっと気がついてくれない。
いや絶対。
「お母さん」
だから、箸を持ったまま母に声をかけた。
ん？ と口にお手製ハンバーグを含んだまま顔をこちらに、向けて、話を聞く姿勢を少し、とる。
Aは気になっていることの一つを口にした。
「私、その学校に行くの？ ゆみと会えない？」
気になっていることが、いっきに二つ滑り出た。
自分ではわからなかったことだが、気になったことは、全部で三つだったらしい。
佐藤家は、その夜、ドッと笑いが爆発した。
魔法使いと、魔女の笑いだった。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年4月25日 18時
