生き残った男の子 ページ25
Aがソレを思い出したのは、ロンがハリーの稲妻型の傷を見て「それじゃ、これが『
『例のあの人』。その人は、ホグワーツから初めて手紙が届いたその夜に、両親が話してくれた「恐ろしいこと」の重要人物であった。
『例のあの人』は、昔、仲間と大勢の魔法使い・魔女を殺し、殺させた首謀者である。
もちろん、『例のあの人』にもちゃんと名前がある。ヴォルデモート――――ヴォルデモート卿という名が。しかし、人々(魔法使い、魔女)はこの名を言わずに、『例のあの人』という。
なぜか。それは今でも口に出す事を恐れているから、である。口に出してしまえば、とっくにいなくなった筈のその人が、再び現れるとでも思っているのだろうか。
Aはそれを大人から聞いた時、馬鹿々々しい、と幼いながらに感じた。しかし、実際そうであり、『例のあの人』を知らない者にとっては、それほどの力を持っているのだと感じることであった。
では、その世界最強であり最恐の者が、一体全体どうやっていなくなったのか。
それは、Aの前に座っている少年、ハリー・ポッターがとても大きく関係している。
自分と同い年のハリーは、ちいちゃな赤ん坊だった頃、『例のあの人』の呪いを跳ね返した、という。彼の両親、大人、力のある者たち……、彼らに出来なかった、死の呪いを跳ね返す、ということを、僅か齢１の赤ん坊がやってのけたのである。
その代わり、彼の額には稲妻型の傷跡が残り、そして彼の両親は亡くなってしまった。
なるほど、とAは理解する。さっきの双子も、このロンも、目の前のハリーが『生き残った男の子』だとわかると額を見たことに。
だって、彼は魔法界一の有名人なのだから。
そうと分かれば、少女も少しだけ彼を見る。
ハリーがロンの問いに答える。「うん。でもなんにも覚えてないんだ」
「なんにも？」ロンとAの声が被った。
そんな二人に、ハリーはそうだなぁ、と考えてくれる。
「緑色の光がいっぱいだったのを覚えてるけど、それだけ」
「うわぁ」また二人は被る。
肩をすくめたハリーは、そうだ！ と気が付いた様に今度は二人の顔を見る。
「君達の家族はみんな魔法使いなの？」
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年4月25日 18時
