切手のない手紙 ページ2
その日も、太陽がコンビニ近くの大通りから、家の近くの小道まで、ジリジリと焼いていた。
5回目の夏休みも、もうすぐ始まろうとしていて、Aはソファに寝っ転がり、アイス・キャンディーを加えていた。
学校はすでに終わり、ついでに両親は仕事に行っていた。
宿題はもちろん出ていたが、この状況で、一台誰が、そんなこと、をするのだろう。
宿題を開く気力さえも、下校途中に、太陽にとかされてしまった。
カタン、と。確かに音がした。玄関の向こう、郵便物入れが、開いて、閉じた音である。
母が帰ってきたのだろうか？ (母はいつも父よりずっと早く帰ってきていた。)しかし、少々帰ってくる時間がはやい。
加えていたアイス・キャンディーを、噛み砕き、棒にしてゴミ箱へ投げた。
そして、少しばかり身なりを、ちゃんと、してから玄関へと出て、郵便物入れを開ける。
そこには、手紙らしきものが一つ。
黄色みがかかっていて、緑の字で自分の名前が、英語で書いてある。
読めたのは、両親が、かつて外国で住んでいて、その名残りからか、家庭内では英語で話すことが多いからであった。
そして、“H”という文字の周りに、ライオンと鷲と熊とヘビが取り囲んでいる、スタンプなようなものが紫色でおしてあった。
自分宛だから、開けようか少し迷った。
しかし、表面上は自分宛になっているが、中身は保護者宛の手紙だろう、と思い、ダイニングテーブルにほっぽいた。
たいして興味もないので、すぐにそのまま冷蔵庫に直行し、アイス・キャンディーを取り出す。
本日3本目だった。
「ただいまぁ」
「おかえりー」
暫くして、母が戸を開けた。外の熱気が、せっかくエアコンで涼しくした部屋に入ってくる。
それも相まって、Aは気のない返事を返した。
「おみやげはー？」
漫画から手と目を離して聞けば、母もまた、冷蔵庫に直行し、アイス・キャンディーを取り出している途中だった。
「アイスがあるでしょ……って、もう5本も食べたの！？」
食べすぎよ、という注意をへいへい、と受け流す。そしてそのまま漫画へと意識を向ける。
遠くで、母が「あら？」というのか聞こえる。どうやら、切手のない手紙に、気が付いたらしかった。
「なにすんの！」
思わず声を張り上げた。母が漫画本をとりあげたからだった。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年4月25日 18時
