187＿ 余所見 ページ8
·
ご飯も食べて一通りイルミネーションを見たり、
写真を撮ったりしていると、
もうすっかり空が真っ暗になっていた。
「そろそろ帰ろか？」
崇裕先輩がそう言い、駅に向かうことになった。
しかし、すごい人混みで上手く歩けない。
人の波に飲まれないように望くんの後ろを必死に歩いていると、
少し離れた所に、頭一つ分飛び出ている、
背の高い黒髪の男の人が見えた。
その後ろ姿が何だか流星そっくりで、
私は思わず目を離せなくなる。
「りゅ、うせい？」
小さく呟くと、その人が不意に振り向いた。
見えた顔は全くの別人で、早まった鼓動が一瞬で冷えていく。
小さく溜息をついて、
流星を意識しすぎな自分に呆れながら再び歩こうとした。
「あれ…え、嘘…」
前を向くと三人の後ろ姿は見えなくなっていた。
はぐれてしまったのだ。
望くんの背中にちゃんと着いていかないから、
流星の面影を探して余所見をするから、
私は結局全て見失って独りになってしまったんだ。
自分の曖昧な心と、今の状況がぴったりと重なって、
体がどんどん重くなる。
何とか人混みを抜けて、駅の隅にあるベンチにようやく腰かけた。
こんな中途半端な自分じゃ、きっといつか二人とも失う。
そんなことは分かってる。
けれど、自分の気持ちが分からない。
どうしたいのか。
結局私は誰が好きなのか。
何度も望くんから電話がかかってきていたけれど、
私は出ることが出来ないまま、
左手首で揺れるブレスレットを見つめていた。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 280人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しょーゆ(プロフ) - みなみさん» かしこまりました！ (6月22日 17時) (
レス) id: 474224f74f (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - しょーゆさん» 新作ではありませんが、前に作って更新停止していたお話を今二つ連載中ですのでもしよかったら覗いてみてください！もちろん大歓迎です！ありがとうございます！ (6月22日 11時) (レス) id: b2af61b783 (このIDを非表示/違反報告)
しょーゆ(プロフ) - みなみさん» 次回作も首を長くして待ってます！お気に入り作者さんに登録してもよいですか？ (6月22日 11時) (レス) id: 474224f74f (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - しょーゆさん» コメントありがとうございます！私の作品で泣いていただけるなんて、こんなに嬉しいことはないです。こちらこそありがとうございます☺︎ (6月22日 9時) (レス) id: b2af61b783 (このIDを非表示/違反報告)
しょーゆ(プロフ) - 久しぶりに大号泣しました。感動作をありがとうございます‼︎ (6月22日 2時) (レス) @page45 id: 474224f74f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みなみ | 作成日時：2023年5月30日 19時
