152_ エース ページ5
·
ホイッスルの音が鳴り響いてからは、殆ど記憶が無い。
望くんの姿しか、記憶が無い。
無駄の一切ない動きだった。
ボールを操る足も、他の人の所にボールがある間も。
全て計算され尽くしているかのようで、
何処に誰がいるか、チームメイトの動きも、
全て完璧に把握しながら、何手も先まで読んでいる。
試合を見ていて、すごいとか、面白いとかではなくて、
美しい試合だ、と思った。
結果は3-0で私たちの学校の勝利。
その内二点は、望くんが決めたものだった。
神ちゃんがよく、
「のんちゃんはサッカー部の圧倒的エースやから」と、
口癖のように呟いていた意味を、私は今更知った。
試合が終わってから、ベンチでそのまま二人を待つ。
「どうやった?初めて見た望のサッカーしてるとこ。
かっこよかったやろ?」
日和ちゃんがニヤニヤしながら私の横腹をつつく。
「いや、うん…すごかった」
「惚れた?惚れ直した?」
「サッカーのプレイヤーとしてかっこいいなと思っただけやから!」
「えーつまらんなー。
私は流星より、望Aペア推しやから、
早くくっついて欲しいんやけどなあ」
「ふふっ、何なんそれ」
日和ちゃんとお喋りをして二十分ほど経った頃、
神ちゃんと望くんが私たちの元へやって来た。
「お、お疲れ様!」
「おめでとう!」
二人でベンチから立ち上がってハイタッチをする。
「ありがとう!俺あんま活躍出来んかったけど」
頭を搔く神ちゃん。
「二点目のゴールは神ちゃんのパスから繋がったやつやん!
すごいで!」
「ははっ、まあな。ちゃんと見てくれててありがとう!」
「なあ!俺は?!
二点もゴールしたこの俺へのお褒めの言葉は?!」
「うるっさいなあ」
日和ちゃんがあまりに鋭く睨みつけるから思わず吹き出す。
「もう〜Aまで笑ってるし」
「ふふっ、ごめん。望くん、ほんまにすごかったで!」
先程までの膨れっ面から打って変わって、
嬉しそうにドヤ顔をしている望くん。
試合前の表情とは、まるで別人みたいにいつも通りの望くん。
グラウンドの中では何だか別人みたいに遠い存在に見えたから、
ちゃんといつも通りの望くんが近くにいるって思えて、
何だか安心した。
·
234人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みなみ(プロフ) - てたたけさん» コメントありがとうございます☺︎そのお言葉がすごく励みになります!まだ長くなりそうですが、なるべく毎日更新で頑張るのでこれからも応援よろしくお願いします! (5月22日 10時) (レス) id: b2af61b783 (このIDを非表示/違反報告)
てたたけ(プロフ) - コメント失礼します!いつも続きが気になって楽しみにしてます!更新頑張ってください!! (5月21日 21時) (レス) id: d26d38b11f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みなみ | 作成日時:2023年5月16日 15時