【HQ×マギ】初夏の青葉と常夏の雪 (ページ16)

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13...夜瞳ページ16

国が祭りで賑わう中、対照的に人がいなくなった王宮に人影が一人。

街を見下ろすようにそびえ立つ王宮の、せり出たバルコニーから街を見下ろしている。

俺はAの隣に立ち、彼女の顔を盗み見た。
下の灯りで照らされた顔に浮かぶ表情からは、如何なる感情も読み取ることはできない。

｢どうした、浮かない顔をして｣

数多の女性を虜にしてきたが、どうもこいつだけはお手上げだ。考えていることが全くわからない。
今も俺が隣にいることに果たして気づいてるのか、反応がない。

仕方がないので話題をつくろうとAの視線の先を追うと、そこには異世界の4人につけた家臣たちが、彼らと楽しげに謝肉宴を楽しんでいた。

｢案外すんなり馴染んだな｣
｢……あの歳でこれだけ早く腹を括れるんですから、大したもんです｣

ようやく彼女のチャンネルがつながった。

｢一緒に混ざらないのか？｣
｢……シンさんこそ、いつもみたいに女性を侍らせないんですか｣
｢健全そうなあの歳の子たちの前では遠慮しておくよ。それに、今だって可憐な女性は隣にいるしな｣

しらーっ、とジト目でこちらを凝視する。

｢侍ってるつもりはないです｣
｢ははは｣
｢それにアリババさんやアラジンくんの前では平気で囲わせてたくせに｣
｢そうか……あの子たちと、同じくらいの歳だったか｣

大戦争の始まる少し前の、短くも平和な時間。

｢彼がバルバットを治めるようになって、もう二年くらいか……時間が過ぎるのは、早いもんだな｣

そう言うと、不意に彼女は吹き出した。

｢…………なんだ｣
｢いやぁ……今のセリフ、すごくおっさん臭いなあと。シンさん老けましたね｣
｢んなっ｣

いひひ、と笑ってAは夜空を仰いだ。
向こうが透けて見えそうな淡い色の髪が、ふわりと風になびく。

｢異世界に連れて来られる人の条件、いっこ教えてあげます｣

何か大切なモノを失った人。

｢彼らは何かしら心に穴を開けてしまっている。その穴が、この世界の穴と共鳴するんでしょうかねぇ｣

夜空を見上げる青紫の瞳には、一体何が映っているのだろう。一体何が、見えているのだろう。

｢彼らは世界の渡り人(レガ・ナーダ)、これからの旅は、彼らの穴を埋める旅でもあるんです｣