【HQ×マギ】初夏の青葉と常夏の雪 (ページ13)

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11...冷眼ページ13

さっきまでののんびりした雰囲気は消え去り、刃物のような尖った冷たい光が、Aの目に宿る。

｢そんなに言うなら正直に言うよ。……君たちは餌なんだ｣

異世界の住人である俺達は、この世界にあらざる異物――いわば俺達と同種の、有害な怪物を引きつける体質を持っているらしい。

そして、その異物のどれかが、俺達を元の世界に帰すために必要な『転界のカケラ』を持っているのだという。

｢別に戦闘能力のない君らを連れ回して、君らを狙って寄ってくる奴らを潰していくのでもいいんだ。でもこの旅についていける戦力は僕一人。いくら僕でも奴らを全部倒せる保証は無いからね｣

だから個々の能力を上げて、俺達自身で処理できるようにしておきたい。そういうことなのだそうだ。

｢でもさ、その暗黒点関連の事件ってこの世界にとっても大きい事件なんだろ？あんたの実力は知らないけど、俺らと一緒に行動すんのが一人だけっていうのはいくらなんでも……｣

俺がそう言うと、Aは難しい顔をして頭を掻いた。

｢んー……アキラは答えづらい質問ばっかするね。……これには国家間のフクザツーな事情がありまして……｣

しばらく考え、再び口を開く。

｢世界崩壊の危機が一度去って、今度は国同士戦力の削り合いが起こったんだ。共通の敵が無くなった今、隣国は侵略対象になり得るからね。そんな中で、シンドリアの兵士や国を代表する重臣が小隊組んで世界を渡り歩いてたら、そりゃあ疑念で溢れかえるわけさ｣

分かる？と目で尋ねられたので頷く。

｢だからなるべく少ない人数、少数精鋭でね。それで君たちの能力向上は必須条件なんだ｣

そして、パンの最後の一欠片を口に放り込み、Aは付け足すように言った。

｢そうそう。あとこっちで進む時間とあっちの世界で進む時間の早さは違うから。多分辻褄合わせるために、向こうの世界に帰るときは時間が経ってないことになると思う。だから今は時間がないって焦るんじゃなくて、死なないようにしっかり修練することをオススメするよ。こっちで死んだら、向こうでも死んだことになるからね｣

あれだけ言い寄った後だからか、岩泉さんはきまり悪そうに唸った。

｢さて、話せることはこれくらいかな｣

よいしょと椅子から立ち上がり、大きく伸びをする。

｢久しぶりに色んな事があって疲れたなあ。僕は休ませてもらうとすっかな……｣