事実 ページ10
「かつて…この西軍には、最強と謳われた兵がいた。あらゆる事を瞬時にこなす、西国の最大勢力として、ただ一人で謳われた男だ。いいや、男というには幼かった。青年だ」
「……それが、なんだってんだ」
あろまが苛立たしいという口調で返した。
男はさも楽しそうに人さし指を立てる。
「だが、ある日。青年はある家族を殺せ、と命じられた。親しい仲であったが故に、親を殺すだけにとどまり、子どもを連れて逃走した。……かつて、＜トゥリトール＞と呼ばれた者だ」
「…………っ？！」
＜トゥリトール＞。その言葉に、名前に、覚えがあった。
あろまの脳裏に、１７年前のあの日が浮かぶ。
『科学者の家族は全員始末しろ、＜トゥリトール＞』
「……サー」
酷薄な目つき。冷徹な表情。
背後からの月明かりに照らされる白銀が、闇を裂く。
影となった＜トゥリトール＞の表情が、刹那歪んだことを覚えている。
「あろま…、大丈夫…？」
「…あぁ…、ちくしょうが…」
思い出したくないことを思い出した。しかも、最悪な状態で。
(だけど、事実は変わらないんだろう、きっと)
そうだ。＜トゥリトール＞。覚えがあるはずだ。
「＜トゥリトール＞は逃れ、３年もの間我らから逃れ続けた。そしてあの日、そうだ。お前が東軍へ逃れたあの日。再び＜トゥリトール＞は戻ってきた」
「……やめろ……！」
それ以上、聞きたくない。
「そうだ。後に＜修羅＞と呼ばれた男。…お前達の言う所の、レイフォードだ」
「黙れ…っ！」
あろまはとっさに叫んだ。
隣でふぶが身体を竦ませようと気に留めもしない。
ありったけのちからを込めて、男を睨みつける。
「あの人はおれの恩人だ。そして、それはどうやったって変わらねぇんだべや！ おめぇらが、レイの事を知った口でご高説並べてんじゃねぇべ！」
レイフォードが、何かを隠しているという事は、幼いながら察していた。
だがそれでも、彼は優しかった。何に関しても真摯だった。
だからこそ、あろまも心を許したのだ。
彼が、自分を思ってくれているのだとわかったからこそ。
レイフォードという存在が、自分を認めてくれたから。
どんな自分も、受け入れてくれたから。
だから、傷つけてしまった分、今度は自分が守らなければと思ったのだ。
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長閑(プロフ) - 春夏秋冬あさよさん» コメントありがとうございます！これからも頑張っていこうと思います！読んでくださってありがとうございました！ (2015年4月20日 18時) (
レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
春夏秋冬あさよ(プロフ) - 完結お疲れ様です！長閑さんの軍パロ本当におもしろいです！戦闘シーン最高です！次作も楽しみにしています！ (2015年4月19日 22時) (レス) id: d742c0fb58 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 自分の下手さのせいで展開がうまくいかない部分もありましたが、楽しんでいただけたようで何よりでございます！読んでくださってありがとうございました！ (2015年4月5日 18時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
液体プリン - 完結しましたね、おめでとうございます！読んでいて面白かったし、時々出てくるあろまのデレも見れて、すごく楽しませていただきました！お疲れ様でした！ (2015年4月5日 11時) (レス) id: 9ef6538fc5 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 読んでいただきありがとうございます。更新頑張ります。最後までよろしくお願いします！ (2015年3月19日 15時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長閑 | 作成日時：2015年3月18日 16時
