伝えること、否定すること ページ9
研究所への侵入は容易だった。
かつて使った侵入経路を使えば、あっという間に内部へ入ることが出来る。レイフォードとえおえおは廊下を静かに進みながら、敵を潰していく。
「……レイさん」
「…う、ん? どうしたんだい」
壁に身を潜ませながら、声を落としてえおえおはレイフォードを呼んだ。
「レイさんは…あろまの事、どう思ってるの」
「…あろまの事?」
「そう。…その…博士とか助手とかの事全部除いて、レイさんはどう思ってるの?」
先程レイフォードがした話を踏まえてえおえおが出した問いに、レイフォードは言葉を詰まらせた。どう答えればいいのかわからなかったからだ。
「…あろまの事を気にかけてくれてる事も知ってるし、大切に思ってるんだなっていうのも分かる。けど…、レイさん自身としては、どう思ってるの」
(自分、自身として?)
あの夫妻から預かった子? 罪悪感から? 同情の念から?
どれも違う。
じゃあ? それなら、どうして……
「……好きだから、かなぁ……」
そう、口をついて出た。
自分でもはっとしてえおえおを見れば、えおえおがニヤけそうになりながら必死に堪えている顔が眼に入る。
「ちょ…、戦場でその顔は不謹慎じゃないかい…」
「せ、戦場でのろける方が不謹慎でしょ、レイさん…」
「いやいや、のろけとかそう言うつもりで言ったわけじゃ、」
『いぇーいのろけー!』
「きっくん。いい加減にしなさい」
未だに笑いを堪えるえおえおは珍しく柔らかい笑みを浮かべ、レイフォードを見た。
「まぁ、でもきっと同じ気持ちじゃないかな、あろまと」
「……え?」
足音が聞こえる。
表情を引き締めたえおえおがダガーを構え、先に行くと告げ踏み出した。
遅れないようにその後について腰に携えたあろまの刀を掴む。
振り切ったその刀身に刻まれた、唐草模様と流線の混ざり合った独特の紋様に、レイフォードは腹に落ちる何かに息を吐いた。
(…元は、自分の刀だった)
あの時、死んだ筈だった。
だが、西軍のあの中将が第二期強化兵の引率のような役割として、第一期強化兵であるレイフォードを出したのだ。
わざわざ、博士と助手の研究室からこの義眼を見つけ出し、レイフォードに施術してまで。
(…あろまと同じ気持ち、か)
例えそうだとしても。
「…『俺』は、同じ場所にいられない」
すべて、自分のせいなのだから。
84人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長閑(プロフ) - 春夏秋冬あさよさん» コメントありがとうございます!これからも頑張っていこうと思います!読んでくださってありがとうございました! (2015年4月20日 18時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
春夏秋冬あさよ(プロフ) - 完結お疲れ様です!長閑さんの軍パロ本当におもしろいです!戦闘シーン最高です!次作も楽しみにしています! (2015年4月19日 22時) (レス) id: d742c0fb58 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 自分の下手さのせいで展開がうまくいかない部分もありましたが、楽しんでいただけたようで何よりでございます!読んでくださってありがとうございました! (2015年4月5日 18時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
液体プリン - 完結しましたね、おめでとうございます!読んでいて面白かったし、時々出てくるあろまのデレも見れて、すごく楽しませていただきました!お疲れ様でした! (2015年4月5日 11時) (レス) id: 9ef6538fc5 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 読んでいただきありがとうございます。更新頑張ります。最後までよろしくお願いします! (2015年3月19日 15時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:長閑 | 作成日時:2015年3月18日 16時