違和感 ページ33
「…あんた、その腹なに…？」
ふっくら、というには厳しい程膨らんだ下腹部を見て、おれが呟く。
女性は嬉しそうに笑って、おれに歩み寄った。
「赤ちゃんがいるのよ、ここに」
「…赤ん坊…？」
「そう。…新しい命」
そっと手を添えれば、中で何かが動く。
「うわっ」
「ふふ、びっくりしちゃった？ …この子、元気ねぇ。さっきからとっても元気に動きまわってるわ」
にこやかに笑った女性の腹に再び手を当てながら、おれは軽く息を吐いた。
男性の方はここの科学者で博士と呼ばれていて、女性の方は博士の妻で助手だそうだ。
先程通った部屋似合った妙な機械は、この博士が作っているものだそうで。
博士はおれの怪我を改めて診断しながらおれに話をふる。
「兵のようだが、キミはどういう立ち位置で動いているんだい？」
「…おれは…特攻とか、工作員とか…いろいろ…」
「…じゃあキミが…レイフォードかい」
「なんで…知ってる？」
ここで博士と呼ばれる様な人間なのだから当然かとも思ったが、それでも一度も見たことのない人間に名前を呼ばれるのは妙な感覚があった。
彼は自身の茶色の短髪を掻き混ぜ、苦笑する。
「…キミの事はいま、反南軍ではもちきりだよ。東軍に対する戦力として一番注目されている」
「そう、なのか？ …上のヤツら、まったくそういう情報教えてこねぇから…」
「…キミはまだ１０歳だろう…。もっと…子どもらしい事をしたいだろうに」
博士はそう言って、悲痛な表情を浮かべた。
ずり下がった眼鏡の山を人さし指の側面で押し上げ、その表情を更に深めて。
おれの手を握る博士に、おれはきょとんとした表情で博士を見る。
「子どもらしい事って、なんだ？ 俺はずっと反南軍で育ってきたから、そういうの知らねぇ」
「…そうか…」
やはり博士は悲しそうに表情を歪め、おれの頭を撫でた。
「キミのちからに、少しでもなれるといいんだが」
「…別に…ならなくたっていい…」
つん、とそっぽを向いて言えば、博士は「そうか」と小さく呟き、おれの頭を再び撫でる。
その手の感覚にやや違和感を覚えながら、おれはそのままでいた。
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長閑(プロフ) - 春夏秋冬あさよさん» コメントありがとうございます！これからも頑張っていこうと思います！読んでくださってありがとうございました！ (2015年4月20日 18時) (
レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
春夏秋冬あさよ(プロフ) - 完結お疲れ様です！長閑さんの軍パロ本当におもしろいです！戦闘シーン最高です！次作も楽しみにしています！ (2015年4月19日 22時) (レス) id: d742c0fb58 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 自分の下手さのせいで展開がうまくいかない部分もありましたが、楽しんでいただけたようで何よりでございます！読んでくださってありがとうございました！ (2015年4月5日 18時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
液体プリン - 完結しましたね、おめでとうございます！読んでいて面白かったし、時々出てくるあろまのデレも見れて、すごく楽しませていただきました！お疲れ様でした！ (2015年4月5日 11時) (レス) id: 9ef6538fc5 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 読んでいただきありがとうございます。更新頑張ります。最後までよろしくお願いします！ (2015年3月19日 15時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長閑 | 作成日時：2015年3月18日 16時
