待つ者 ページ28
眼を開けば、見慣れた天井。
医務室の天井は白く清潔感に溢れている。
椅子が傾くぎりぎりまで体重をかけ、足は机の上に投げた体勢。
疲れから、そのまま寝てしまったのだとあろまはようやく気づいた。
「……あぁ」
眉間を揉みながら足をおろし、息を吐く。
机の上には西国の研究所…正確にはその跡から見つかった、博士、助手が持っていた資料が乱雑に広げられている。
1週間前のあの最後。西軍研究所は<サイレント>の自爆に巻き込まれ、完全に瓦解した。
それに乗じて東軍は西軍との抗争終了に至り、現在、西国は東国の管理下となった。
そして、そんな西軍研究所で唯一無事だったのは、自爆の基点となった場所のすぐ隣にあった夫妻の書斎。
そこにあった資料が、いまあろまの目の前に広げられている。
事実、博士と助手の発想力、実力はめざましい物だった。
現在の科学力では実現できないであろう、時代の先駆けとなる様な資料ばかりだ。
その中でも今回活用されたのは、博士と助手が開発した義眼についての資料と、すでに生成が不可能となっている金属についてだった。
あの爆破に巻き込まれたあろまとレイフォードは、研究所からの脱出口を降っていた。
だがそれが間に合わず、レイフォードはあろまをかばいながら落下。
あろまが気がついた時には、瓦礫の山の下に自分を庇う形で倒れるレイフォードの姿があった。
救出を試みていた時にきっくん達と合流出来たのは奇跡に近かっただろう。
東軍駐屯所へ戻る間にも手を尽くしたが、それでもこの資料がなければどうにもならなかった。
怪我はもちろんの事、レイフォードの右上半身と左足は金属製で、あろまも、その他の人間にもまったく見当がつかなかったのだ。
レイフォードが<サイレント>の操作を施している最中見つけた義眼を施術し、今回の怪我を治すための施術を続けて行い、西軍研究所から発見された資料を用いて金属の修復を行った。
それだけ手を尽くしても、レイフォードは未だ眼を覚ましていない。
背後のカーテンの奥で、点滴を受けたまま眠る黒に、目覚める気配は無かった。
あろまは静かに立ち上がり、気分転換にと廊下へ出た。
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長閑(プロフ) - 春夏秋冬あさよさん» コメントありがとうございます!これからも頑張っていこうと思います!読んでくださってありがとうございました! (2015年4月20日 18時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
春夏秋冬あさよ(プロフ) - 完結お疲れ様です!長閑さんの軍パロ本当におもしろいです!戦闘シーン最高です!次作も楽しみにしています! (2015年4月19日 22時) (レス) id: d742c0fb58 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 自分の下手さのせいで展開がうまくいかない部分もありましたが、楽しんでいただけたようで何よりでございます!読んでくださってありがとうございました! (2015年4月5日 18時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
液体プリン - 完結しましたね、おめでとうございます!読んでいて面白かったし、時々出てくるあろまのデレも見れて、すごく楽しませていただきました!お疲れ様でした! (2015年4月5日 11時) (レス) id: 9ef6538fc5 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 読んでいただきありがとうございます。更新頑張ります。最後までよろしくお願いします! (2015年3月19日 15時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長閑 | 作成日時:2015年3月18日 16時