【ＭＳＳＰ軍パロ】修羅黒威・乱【男主】

自嘲 ページ15

あの子の事は、もう思い出していた。
　ただ、あの子にはもう新しい仲間がいて、新しい場所があって、新しい大切なものがあった。
　だから、“過去(おれ)”はもう必要ないのだと、親離れをしていく子を見る親のような気持ちになり、少しだけ寂しくも思った。
　だが、これが正しい。
　自分はもう、十分なものをもらっている。だから、これでいいのだと、言い聞かせていた。
　ただ、あの子が幸せであれば良いのだと。
　だからあの場を見定めようと思っていた。
　かなり騒々しいとは思ったものの、彼らといるあの子の表情が柔らかくて、昔の笑顔を見た気分だった。
　今は難しい表情や、自分の事で西軍への憎しみで心を塗り潰されていないか心配になる程、怒りの表情ばかりを見ていたから。
　だから、その笑顔を見て安心していた。ここから、この場なら、あの子が幸せに暮らせるのだろうと。
　それならばそれでいい。自分などいなくとも、あの子は生きていけるのだから。
　ならば、自分は？
　＜トゥリトール＞としてあの子の幸せを奪う発端を作り、＜レイフォード＞として何食わぬ顔で３年間育て、あの子を逃し、西軍へ引き戻され。
　＜修羅＞となりあの子を殺そうとして、＜レイフォード＞としてあの子と共にまたいられる事になって。
　こんな、自分は？
　どうするべきなのか、まったく見当がつかなかった。
　今回のことで、あの子を助けたけれど。
　あの子のすがりつく様な眼に困惑して、ごまかして、先へ行かせて。
　また、こうして敵の前に１人で立つ。
　あの時のように。
　ここで自分にできることは、あの子達を逃がすことだけ。
(あぁ、まったく)

　誰か、おれを滑稽だと笑ってくれ

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