再現 ページ12
「ふぶッ」
ふぶが肩を掴まれ、前に引きずり出される。
あろまはふぶを呼び前へ出ようとするが、拘束されている事も加えてそれはかなわず、後ろにいた兵士に襟首を掴まれて引き戻された。
「…っ、…てめぇら…っ」
「そういえば、彼は第二期強化兵だったね」
男の足がふぶの頭を踏んだ。
あろまが吠えようと、男はたじろがない。
「おい! おめぇその足どけろや!」
「知っているか? 強化兵案はかつてから出されていた。第二期など想像もされていなかったのだ。第二期強化兵案は私が考案した。さらに具体的にした。より効率的に、より確実に。殲滅する為だけの兵士の生成だ」
ふぶの襟首から十字架とIDタグが落ちた。床にあたり、独特の金属音を奏でる。
「その為に<サイレント>を軍事転用したのだ。第二期案をさらに固めていくために。…だが、開発の中心であった博士と<魔女>の逃亡により、かなり実用化まで時間がかかってしまった。資金は北国から来ていたとはいえ、まったく、嘆かわしい事だ」
「……そんなの、ばかげてる」
それのせいで、あろま自身も、彼自身も傷ついた。
知っている筈の事がすれ違う。大切な人すら、思い出せなくなる。
その違いに、彼は苦しんでいたのだ。
「それのせいで、一体どれだけの人が苦しんだ…!」
「…苦しむのは兵士であり。その現況はすべて戦争だ。東西南北を巻き込むこの巨大戦争は、兵士の血と武器によって終わる」
「…談話で終わらせようなんざ、確かに甘い話かもしれねぇべ。けど、そう言われるのは認めねぇ」
「そう言ってすべてを否定するか? …あの男の事実さえ」
男の笑みがあろまを見る。
違う。そう否定したかった。だけど言葉は口から出なくて、ただ喉の奥で引っかかる。
ふぶの青の眼と視線があう。絞り出した声で、あろまは言った。
「…確かに、そうかもしれねぇ。けど、そうだとしても…おれは、それ以上にあの人を信じたい」
あろまの言葉を、男が笑い飛ばそうとしたその時。
廊下の先が爆発し、照明の逆光を浴びて立つ影が、入り口を塞いだ。
鈍色の隻眼。もうもうと立ち上る煙と照明の光を背に、白銀を携えた黒。
「…あ…」
知っている。これを。
あの日の情景が鮮明に返ってくる。
月明かりを背に、そこに立つ黒。白銀を携え、そこに立った影。
影が足を踏み出し、床の砂を踏みしめた。
84人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長閑(プロフ) - 春夏秋冬あさよさん» コメントありがとうございます!これからも頑張っていこうと思います!読んでくださってありがとうございました! (2015年4月20日 18時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
春夏秋冬あさよ(プロフ) - 完結お疲れ様です!長閑さんの軍パロ本当におもしろいです!戦闘シーン最高です!次作も楽しみにしています! (2015年4月19日 22時) (レス) id: d742c0fb58 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 自分の下手さのせいで展開がうまくいかない部分もありましたが、楽しんでいただけたようで何よりでございます!読んでくださってありがとうございました! (2015年4月5日 18時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
液体プリン - 完結しましたね、おめでとうございます!読んでいて面白かったし、時々出てくるあろまのデレも見れて、すごく楽しませていただきました!お疲れ様でした! (2015年4月5日 11時) (レス) id: 9ef6538fc5 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 液体プリンさん» 読んでいただきありがとうございます。更新頑張ります。最後までよろしくお願いします! (2015年3月19日 15時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:長閑 | 作成日時:2015年3月18日 16時