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「そう…かな」
「俺はそう思います。なんで、きっくんに後で伝えようかと」
「…ね、ナノ」
「はい、なんです?」
 至極さっぱりとした様子で言うナノに、俺は問う。
「どうして、先に出たの?」
「…俺、あぁいう場得意じゃないんです」
 苦笑を浮かべたナノ。それを嘘だとは言わない。
 だけど、絶対にそれだけが理由じゃないと俺は思っていた。
「他にも、何かあるんじゃないの」
「…特に、」
「本当に?」
 少し食い気味か。そうは思ったが、ナノはそれこそ問い詰めでもしなければ自分の事を話してくれない。
「……ただ、怖くて」
「怖い、って?」
 ナノは少し沈黙し、顔を俯かせた。
 歩く足は止めず、気づけばナノの部屋の前。
「俺が、元西軍兵だって事は知ってますよね」
「…うん」
「だから、怖いんです」
「…だから…って?」
 西軍だったから、何かあるのだろうか?
 俺は、ナノの言いたい事をすぐ理解できなかった。
「俺、いま、幸せ…なんだと思います。きっくんもえおさんも、あろまさんもいて、ふぶさんといられる。みんなといられるこの時を、幸せだと思えてると思うんです。だから、ただ、怖い」
 手の届く場所にある幸せというものを、感じた事がない。
 その手に収まった彩り溢れる欠片が集まって、彼と言う存在を照らしている。
「…この手に収まった幸せが、夢なんじゃないかって思えるくらいに、怖くて、堪えられないんです」
 明日には消えてしまうかもしれない場を持つ間柄だから。
 そう言って頬を濡らしたナノに、俺は手を伸ばした。
「…ふぶ、さん?」
「大丈夫。俺だってね、同じような事思うよ。俺らはどう頑張っても軍人で、戦わなくちゃだめだ。気がついたら、隣に馴染みがいなくなってるかもしれない。そんな明日が、すぐ目の前に来てるのかもしれない。そう思うよ。でもさ」
 引き寄せたナノから少し身体を離して、ナノの頬に手を当てた。
 揺れる濃紫の瞳が、俺の青を映す。
「もしそうでも、俺らはいまを楽しむしかないし、いまある一瞬を生きるしかない。いまここにある幸せを噛み締めなきゃ、いざって時に立てない。1人でも立たなくちゃならない時に、俺達を支えてくれるのは、『ここ』にいる仲間達だろ?」
 胸に拳を当てそう言えば、ナノはやんわりと笑みを浮かべてくれた。

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長閑(プロフ) - 麒麟さん» 書いてる話が男主なんでどうしてもそういうふうに傾いてっちゃうんですよね、なんででしょう(すっとぼけ←) 読んでくださってありがとうございました! (2015年6月28日 19時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
麒麟 - 面白いです!これはホモォ・・・「(^o ^)」な展開ですかね・・・! (2015年6月28日 18時) (レス) id: a165517e8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長閑 | 作成日時:2015年2月28日 3時

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