挑め試験_3 ※E ページ16
やや肩で息をしながら俺に必死についてくるFBを視界の端で見ながら、俺は更に先へと進む。道に現れる標的を叩き壊し、弾き飛ばして進んでいく。FBも後方から目標物を倒し、俺の後をついてくる。
時折見える計測器の得点に舌打ちをする。この試験ではタイムと倒した目標物や各位置での単体タイム等の総合で成績が出される仕組みだ。
(遅いな)
FBが悪いという訳ではない。俺が先を行っているにも拘らず、上位スコアには届かない。
ただし今季軍学生の上位得点には届いている。今季ペア得点では一位だが、歴代の上位ペア得点……つまり、ジュードとF91の叩き出したペア得点とはかなりの差があった。
(あの2人は、やっぱり特別なんだな)
見に染みて痛感する。しかしだからといって諦めるわけにはいかない。
「えふ、」
視界の端にチラと映った目標物を、俺は反射的に拳銃を向けて引き金を数回引いた。
その途端、ビーッとけたたましいブザーが鳴り響き、大きな音でアナウンスが響く。
『FBクンとえおチャンのペア〜〜〜ッ?』
声はF91。楽しげに大笑する声が響いたかと思うと、続いて驚愕の一言が発せられた。
『失格〜〜〜!!』
「ハァ!?」
「うそ!?」
(まさか)
さっき俺が目標物だと思ったものは、目標物じゃなくて……
俺とFBの視線の先、やや遠くの高台らしき場所に立っていたF91が、片手で持ったナイフをちらつかせつつ、ニヤリと笑った。
『試験官狙撃するヤツは失格で〜〜〜す』
「んなとこに立ってる方が悪いんだろ! 誤射だ誤射!!」
『うるせーでーす。とっとと退場しやがれひよこチャン共がよォ〜!』
「…クソ!」
苛立たしく地団駄を踏む。ようやく俺に追いついたFBがへろへろとした顔で苦笑していた。苦虫を噛み潰したような気持ちになりながら、俺は大きく息を吐き出す。
「…悪い、FB…」
「しゃあないしゃあない! あんなん俺もわからんわ!」
ガハハと大口で快活に笑い、FBは俺の肩を軽く叩く。
「再試はあるし、そっちで頑張っちゃおうぜ!」
「…ありがとな」
俺には焦りがあった。早く彼に追いつかねばという焦り。
その結果こうして失敗した訳だけど、ちょっとだけ失敗して良かったかなと思わなくはない。急がなければならないが、俺の目標を達する為には焦ってはいけないから。
支えてくれる仲間がいる。俺はしっかりと地を踏みしめて、着実に進まなければならない。
内心で改めてFBに感謝しつつ、俺はFBの後について演習場を出た。
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長閑(プロフ) - 代口さん» 初めまして、コメントありがとうございます!当作品を読んでいただきありがとうございます。楽しんでいただけて嬉しいです!趣味詰め詰め小説ですが今後もゆっくり更新していきます。よろしくお願いします〜! (2022年8月9日 1時) (レス) id: 4a86d0b1da (このIDを非表示/違反報告)
代口 - 初めまして、コメント失礼します。話に引き込まれて最後まで読んでしまいました、とても素敵な作品と出会えて良かったです。今後の更新も楽しみにしています。 (2022年8月5日 6時) (レス) id: fb96c304db (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 陵さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて嬉しいです!お話は短編の方にその後の話としてあげようと考えていますのでしばしお待ち下さい!読んでくださりありがとうございました!ゆっくりですが今後も更新していきます。よろしくお願いしますー! (2022年5月3日 1時) (レス) id: 4a86d0b1da (このIDを非表示/違反報告)
陵(プロフ) - コメント失礼します!完結おめでとうございます!!とても素敵な作品に出会えて幸せです、、!5人のお話や脳筋ぶち破り話(?)も楽しみにしています!! (2022年5月2日 2時) (レス) @page50 id: ef30949f28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長閑 | 作成日時:2020年1月26日 3時