踏み入らぬもの_3 ページ13
彼が去った職員室で、僕は思った以上に彼の言葉に動揺していた。
僕はすっかり冷めてしまった、P*sukeが差し出してくれたカップを手にとった。F91も同様にカップを手に取り苦笑する。
「そォんな渋い顔すんなって」
F91の言葉に僕はほんの少し気まずく視線を逸らしてコーヒーを啜った。向かいに座るP*sukeはやや呆れ顔で「まあ」と同様にカップに口をつける。
「しょうがないよね。急にジュードの手を離れるって言うんだもの。ジュードも止めれない自分に複雑なんだよね」
「…ズバッと言うよね、P*suke…」
「あァ! そういうのだったのな」
「え? 何だと思ってたの?」
「おれはてっきり行かせたくねえなって所でもう躓いてんのかと」
「…あいにくそんな大人気なくはないよ…」
大きくため息を吐いて僕は眉を寄せた。
結局、きっくんの異動は前向きに申請する事になった。きっくんがあれだけの決意を持って言ってくれた事で、なおかつ彼にはその技術がある。適材適所だ、それを否定することなんて出来ない。
P*sukeとF91は顔を見合わせて、それから僕に視線を向ける。
「まあでも会えないわけじゃないし」
「そーそー。意外にきっくん泣いて帰ってくるかもだぜ? あそこ座学ばっかりだし、忍耐いるし」
「意外に教官に突っ返されるかもね」
「ありそ〜!」
「…露骨に励ましてくれなくていいんだよ」
『露骨にヘコんでるから言ってるんだけど』
声を揃えて言う二人に僕は眉間を揉んだ。
(本当にそんなんじゃないんだけどな…)
確かに寂しさはある。だからと言って彼らの意志を折ってまで僕の意志を通すことは出来ない。
僕にできるのは、彼らが死なないように手を尽くすことだけだ。
「…みんなが強くなってくれた方が、僕としても嬉しいから別にいいんだけど…」
「だけど?」
「…大きくなるのが早いなと思って…。…僕が少し成長しようとする間に、みんなはぐんぐん進んで行っちゃって…」
「…いい年したおれらみてーなおっさんより、あの4坊主の方が伸びしろ広いだろうしなァ、成長もはえーだろうよ」
F91のケロリとした言葉に僕は眼を伏せた。
「…そうだね。喜ばしいことだよ」
「だろ? ま、今後に期待って事で。なにせ明日からは、アレ、だからな」
にやりと笑ったF91に、僕は一瞬何の事か分からず首を傾げたが、しばらくして思い出した。
「あ、…あ、…ああ〜…」
「何? なんで?」
一人だけピンと来ていないP*sukeが慌てた顔でコップを机においた。
27人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長閑(プロフ) - 代口さん» 初めまして、コメントありがとうございます!当作品を読んでいただきありがとうございます。楽しんでいただけて嬉しいです!趣味詰め詰め小説ですが今後もゆっくり更新していきます。よろしくお願いします〜! (2022年8月9日 1時) (レス) id: 4a86d0b1da (このIDを非表示/違反報告)
代口 - 初めまして、コメント失礼します。話に引き込まれて最後まで読んでしまいました、とても素敵な作品と出会えて良かったです。今後の更新も楽しみにしています。 (2022年8月5日 6時) (レス) id: fb96c304db (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 陵さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて嬉しいです!お話は短編の方にその後の話としてあげようと考えていますのでしばしお待ち下さい!読んでくださりありがとうございました!ゆっくりですが今後も更新していきます。よろしくお願いしますー! (2022年5月3日 1時) (レス) id: 4a86d0b1da (このIDを非表示/違反報告)
陵(プロフ) - コメント失礼します!完結おめでとうございます!!とても素敵な作品に出会えて幸せです、、!5人のお話や脳筋ぶち破り話(?)も楽しみにしています!! (2022年5月2日 2時) (レス) @page50 id: ef30949f28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:長閑 | 作成日時:2020年1月26日 3時