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この微妙な距離感 - 2 ※A ページ8

ソファの肘掛けにもたれると、頭が自重で少しばかり下がり、視線がテーブルに落ちる。
 それなりに使い込まれている灰皿と、置いていかれた煙草とライター。携帯が伏せて置かれ、奥には写真が整えて置かれている。何気なくそれに手を伸ばし、一枚一枚、しかし惰性の様に眼を向けた。
「…これ…」
 春、桜を撮りに行ったときの写真。桜吹雪の中、俺が写真を撮っていた。藤棚に行った時の写真。やはり、俺が写真を撮っていた。ひまわり畑で、企画に使えもしない写真を撮っていた。それがただ、絵の様に虎渓の写真に収められていた。
「……人撮るの苦手、とか言ってたヤツはどこのどいつだよ」
 超うまいじゃん。
(俺は、お前の眼鏡に敵う世界を見せてやれてたんだな)
 アイツの言う、有り体のそのままの世界を見せてやれてるかはよくわからない。けれど虎渓が撮りたいと思う程度には、近いところにいるらしい。
 写真をテーブルに戻し、もう一度大きく息を吐き出す。
(……3ヶ月か……)
 あっという間に終わってしまう期間だ。実際もう既に2周間くらいは経っている。だと言うのにお互いに仕事の話はすれど、それ以上はなかった。これはたぶん、友人関係時と特に何も変わらないだろうとアクションを起こしてみた訳だが、まさかこうなるとは。
「…俺、何の準備もねぇな?」
 シモネタ的な意味でも。
 そんなことを考えていたからか、リビングの扉が開いたことに気づかなかった。
「何がスか」
「うわっ!?」
「ウォッ。び、びびった…上がりましたんで…」
 湯気を携え、虎渓はペタペタとリビングの入り口から俺の隣へ、少しスペースを開けて座る。
「で、準備って? …あ、泊まり用具スか? 新品の歯ブラシとかあったんで、そのあたり大丈夫っスよ」
「……ありがとよ……」
「なんでそんなげんなりするんスか…」
 苦笑を浮かべ、虎渓は空調のリモコンをいじると暖房をつけた。それから部屋の電気のスイッチの近くに行って何やらスイッチを押して戻ってくる。
「いま床暖房もつけたんで、ちょっとしたら暖かくなるスよ。…ってか、あろまさん頭まだ濡れてるじゃないスか。ドライヤー持ってくるんで、ちっと乾かしといて下さい」
「え、あ、あぁ」
 テキパキと指示をしつつ、再び脱衣場に戻っていく虎渓の背を見ながら、俺はタオルを握りしめた。

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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます!今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω`)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー! (2019年2月12日 0時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……! (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします!コメントありがとうございます! (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です!MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます! (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長閑 | 作成日時:2018年11月16日 2時

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