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淡く心を彩る - 3 ページ41

「ほら、突っ立ってないで座れよ」
 あろまさんに手招きされ、少しぎくしゃくしながらリビングを進む。だってまさかお招きされると思わないじゃない。この事態を全く把握できていない。
「し、失礼します…」
「お前、前押しかけで来たくせに何緊張してんだよ」
 くつくつと笑うあろまさんがキッチンに姿を消し、俺は促された椅子に座る。
 キッチンの方から水が沸騰する音が聞こえて、少しするとコーヒーの匂いが鼻をくすぐった。
 ゆらゆらと湯気が立ち上るコーヒーのカップが前に置かれる。あろまさんは向かいの椅子に腰掛けて何度かコーヒーを吹き冷ますとカップに口をつけた。
「……あのさ、俺考えてたんだけど」
「…ハイ」
 神妙な顔つきで口を開く。ひょっとしてこの間の今日でなにか思う所があったんだろうか。
 そりゃ確かに今日まで連絡あんましてませんでしたけど。仕事佳境だったし許してほしい。
 急にあろまさんが噴き出す。先程と同じ様にくつりと笑いながら、あろまさんは「そんな顔すんな」と言う。
「単に俺は敬語やめようぜって言おうと思っただけ。あとさん付けな」
「…急スね…?」
「急じゃねぇよ。だって俺、最初から敬語無しでいいって言ってたしよ」
「そっスけど…一応年上ですし、一応しといたほうがいいのかなって…思ったんスけど。……あと…、あろまさんそういう所気にするかなって」
「俺がいいって言ってんだ、気にすんな」
 そう言って再度くつくつと笑うあろまさんに、俺は考えながらコーヒーに口をつけた。
「…まぁ…えっと、あろまが、言うなら…? そうする…」
「……おー、そうしてくれ」
「し、しばらくは慣れないん、で…、慣れないから、気長に…お頼み申す…」
「ふははっ、何よその言い方」
 軽快に楽しそうにあろまが笑う。俺はそれに苦笑を浮かべ「結構デフォルトですよ」と言う。
「…そんなに楽しいかなぁ? 敬語じゃない俺と話すの」
「そりゃ楽しいに決まってんだろ。ずっとこうやって話したかったんだから」
「……な、なんか少女漫画とかで聞きそうなフレーズ」
「ははっ、確かにな。…じゃあついでに言っとくか」
 あろまはやはり軽快に笑いながら湯気の立ち上るコーヒーカップに口をつけた。
「お前が来た夜あるだろ? あん時にさ、俺もお前の事いつ好きになったんだろうとか、どこが好きなんだろうとか色々考えたんだけどよ」

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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます!今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω`)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー! (2019年2月12日 0時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……! (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします!コメントありがとうございます! (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です!MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます! (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長閑 | 作成日時:2018年11月16日 2時

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