“俺”という存在は - ２ ページ32
「…なんか、感覚にズレがあるっていうか…、俺は、俺の見てる世界とか、そういうのを理解してくれる人に対して持った感情を、そういうのだと勘違いしたんだろうって思って」
「……なんかあろまの言ってる事と自分の事がぐちゃぐちゃになりすぎていつも以上に頑固っていうか…うん、話全部聞いてから後で結論っぽいものは出そう」
「話全部聞いてからって…全部話しましたよ」
俺が今度は怪訝に首を傾げる。けれど二人はそうではない。
「そういうあらすじ的なのじゃなくてさ。…迪の気持ちの話」
「俺の気持ち？」
「まだ聞いてないよ。何で言いたくないのか、そういう事避ける理由とか」
「……お、れにも、分からない。ただ、何となく言いたくない。言う必要がない、言う事じゃないと思ってるだけで…。特に深い理由は…」
「深い理由がないなら、そんなに拒否しなくてもいいんじゃん？ じゃあ、気づいてない何かがあると思うけど…」
そう言われてグッと喉に何かが詰まる様な感覚がした。
「俺らに話すのとあろまに話すの、迪の中じゃ何か違うんだろうけど…」
俺らにはちょっと察しきれないしな、とＦＢ先輩が言う。猫谷もやんわり頷いて、それから明太子に箸を伸ばした。
この人達も良い人で、彼も同じ。でも、そこから浮上した、させた筈の彼と、一体何が違うのか。
同じ様な視点があって、話が合って、一緒は嫌じゃない。できれば一緒にいたいと思った。できる限り、……できる限り、
「……そう、できる限り、好きでいてほしいっていうか……」
ころん、小瓶からこぼれ落ちる飴玉の様に。
「……嫌われたくないっていうか……」
ぽろり、糸から滴るビーズの様に。
「“なんもない”ことに、幻滅されたくないっていうか」
視界が揺らいで、瞬きの度にはらはらと落ちて。映画の時みたいな感覚じゃなくて、胸が詰まって、喉の奥が辛くて、頭ががんがんして。思わず嗚咽が溢れるくらいに驚く程辛くて苦しくて、それを噛み殺してなお、水の底に沈んでいるかの様に息が詰まった。
でもきっとこれが、全部、ほんとうだ。
ほんとうの、事実だ。
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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます！今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω｀)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー！ (2019年2月12日 0時) (
レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……！ (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします！コメントありがとうございます！ (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です！MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます！ (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長閑 | 作成日時：2018年11月16日 2時
