夜に沈む - ４ ページ29
俺の微妙な表情にあろまさんは溜息混じりに視線を逸らす。まるで、呆れたような溜息だった。
「…お前はそういう所…頑固だよな。気ぃ使い過ぎなんだよ。別に友人間だろうとするだろ、こういう話。きっくんとかＦＢとはそういう話よくすんだろ？ そりゃ知り合って日は浅いけどよ、そういう事も言えねぇの？」
「……そういう訳では……」
言葉に困る。
彼の言っている事は最もだろう。聞きたいとか知りたいとか、そう思う事は。けれど、それをなぜひた隠しにするのかと聞かれたら、俺は答えられない。
その理由は“言いたくない”ではなく“わからない”からだ。ただ、言いたくない。そんな理由で、この人は承諾してくれるだろうか。
あろまさんは俺の沈黙を“そういう事も言える間柄ではない”という否定にとったようだ。再度吐かれた溜息に、怒りが混じった様に感じられた。
違うんだ。そうじゃない。そうは思っていない。けれど俺には、その事をどう伝えたらいいのかわからない。
「…さすがに、俺に言えないとかちっとこたえるんだけどな」
俺に、を強調して言う彼の語調には、僅かとはいい難い、怒りの様な悲しさの様なものが織り交ぜられていた。
当然だ。仮がつく関係性だとしても、現時点で彼は恋人という立ち位置で、それは俺が望んだものだ。いいや、そこまで辿り着かなくとも、近いかたちになれればという願いが込められた望みだった。
それを厚意で答えてくれた彼に、これは酷い仕打ちだ。
「……俺は、そこまでお前に信頼されてないか」
「そんな事は。…信用してますよ。でも別に、わざわざここで言う事じゃないっていうか」
「何で」
「……何でって…、言う必要が無いっていうか…こういう事、聞くの嫌がりそうだったし……」
「じゃあ、良いって言ったらしゃべんの？」
畳み掛ける様な言葉に、俺は言葉を詰まらせる。視線の泳ぐ俺を、あろまさんの真剣な眼が捉えた。
「別に無理強いする気はねぇよ。けどさ、お前が言ってる事って俺の事考えてるようで自分の事しか考えてないの、わかってるか？」
無難な話しかしない。悪い雰囲気になる事は言わない。良い話は、聞かれればする。
(…そりゃ、だって)
そうだろう。くだらない話じゃないか。愚痴だとか、良い話とか。
俺の話は特に実りもなくとりとめがなさすぎて、どうでもいい話ばっかりだ。特に話す事なんてなかった。
何が聞きたいんだ。
一体俺の何を暴きたいって言うんだ。
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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます！今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω｀)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー！ (2019年2月12日 0時) (
レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……！ (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします！コメントありがとうございます！ (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です！MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます！ (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長閑 | 作成日時：2018年11月16日 2時
