夜に沈む - ３ ページ28
「そりゃ良かった。……そういや、まだ…大丈夫か？ 眠いとか」
「へいきスよ。むしろいま全然眠くなくて話したかった…ところ、です」
思わず出た言葉に声が尻すぼみになっていった。いやまぁ、確かに暇だったから話とかしたいなとはなんとなく思ったけど、ぽろっと言っちゃうくらいに思ったのか、俺。
(…そう考えると、自分で思ってた程は勘違いじゃない、のか？)
「……そ、か。まぁ、…嫌じゃねぇならいいわ」
あろまさんは少し歯切れ悪く言葉を紡ぎ、んん、と口を開く。
「…冬特集してるって言ってたけどよ、もうしてんの？」
「してるっスよ。俺は違う作業なんで、主には同僚がしてますけど」
「ふぅん…作業って、封真…猫谷と？」
「基本的には。仕事の分担的にペアにされるんで」
「それでよくあいつの名前出んのか」
「そっス。まぁ、言うて別行動も割とあるんですけどね」
納得したように頷きながら、それからあろまさんは少し考えたように口をつぐむ。そうして、口を開いた。
「お前さ、あんまり…なんていうか、自分の事当たり障りなく話すよな」
「…へ？ きゅ、うっスね」
「前々からたまに思ってはいたんだよな。まぁ、仕事とかって機密事項とかあるから話すの選ぶだろうけどさ。自分の事話す時は他人が付随した時とカメラの事ぐらいで、それ以外じゃほぼないだろ？」
「……そ、ですかね」
その言葉の真剣さに、俺は喉奥からせり上がる妙な感覚を飲み込んで、肺腑に沈めようとする。
何を……何を、言いたいんだ。この人は。
別にいいじゃないか。
俺の話なんかは。
別にいいじゃないか。
俺の気持ちなんかは。
別にいいじゃないか。
俺の“底”に踏み込む必要性なんか、
「俺は、お前にもう少し踏み込みたい」
無い筈じゃないか。
後頭部しか見せていなかった彼がもそりと動き、こちらを見る。俺を見る。彼の真剣な眼が、俺を捉える。
口の中で言葉を転がして、直接的な否定の言葉を噛み砕く。それを再度咀嚼し、言葉を組み直して、そうしてようやく音にする。
「…いや…ほらでも仕事の話なんかしたら、愚痴ばっかりになっちゃいますし…、そういうの、聞く方も嫌でしょう」
「俺は、そういう所も含めて聞きたいって言ってんだけど」
その言葉が深く刺さる。
今まで悟られないように、ずっとおざなりにしてきた事が、こんなタイミングで返ってくるなんて。
俺は彼に対して、まともな顔を作れているだろうか。
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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます！今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω｀)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー！ (2019年2月12日 0時) (
レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……！ (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします！コメントありがとうございます！ (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です！MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます！ (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長閑 | 作成日時：2018年11月16日 2時
