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夜に沈む - 2 ページ27

オリオン座の…とあろまさんの口の中で言葉が転がる。まだまだ東の空に埋もれたままの星を思いながら、俺は口を開いた。
「冬はオリオン座の一等星ベテルギウス、こいぬ座のプロキオンとおおいぬ座のシリウス、っスよ」
「…よく覚えてんな」
「この間同僚が冬の星空特集組んでたんで、それでっスね」
 成程な、とあろまさんが軽く頷いた。
「お前なんだかんだ言って結構知ってるよなぁ」
「そうでもないスよ。猫谷にも言われたんスけど、興味ないことには頑として興味ないんで、言うてって感じスね」
「…ふーん…そういうもんか」
「そういうもんスよ」
 俺が軽く苦笑する。あろまさんは、少しその表情を曇らせた様に思えたが、俺が一瞥した時にはいつも通りの表情だった。その切り替わりに先程の探索時の事を思い出す。しかし、とはいえそれを問いただす事も、そういう気にもなれない俺は、ただそれを沈黙し、肺腑に沈めた。

 しばらくして、お互いにキリがついた所で作業を終了する事にした。明日は片付け作業に帰る時間の運転も考えるとそれなりの重労働だ。ある程度でキリをつけておかなければ、明日が辛い。
「じゃあ寝るか」
「ハイ、おやすみなさい」
 寝袋に入って寝転がる。テントの外からさわさわと、風と木々の揺れる音が聞こえた。眼を閉じていても特に寝れる気にならず、しかしスマホをつける訳にも彼に話しかける訳にもいかず、目を閉じたり開いたりしながらぼーっと天井を見上げていた。
「……虎渓、起きてるか」
 か細く小さな声が俺を呼んだ。
「起きてますよ」
「……今日、楽しかったか?」
「楽しかったスよ。…急にどうしたんスか?」
「いや…あんま、乗り気じゃなかったみたいだから…、…無理に誘ったんじゃねぇかなって」
 軽く頭を動かしてあろまさんの方を見たが、依然こちらからは彼の後頭部しか見えない。声音は、特に震えていない。ただ少し、落ち込んでいる様に思えた。
「……全然。むしろ、誘ってもらえてありがたい限りスよ。俺一人じゃこういうのしないし…ありがたい事スよ」
 そう返すと、彼の方から細い安堵の息が聞こえる。悟られぬよう聞かれぬよう、最大限に息を殺した音だった。

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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます!今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω`)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー! (2019年2月12日 0時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……! (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします!コメントありがとうございます! (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です!MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます! (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長閑 | 作成日時:2018年11月16日 2時

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