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秋の山とキャンプと彼と - 4 ページ24

かしゃり、と音がして、ディスプレイに表示された。
 黒髪を光が滑っている。光の粒が転がる。イチョウの葉が絨毯の様に広がる地面に影が薄く伸びていた。写真の撮影が終わったらしい彼がこちらを振り返り、どうした、と声を出した。
「…また撮ってたか?」
「えぇ、まぁ。良さげな構図だったんで。…たまには別の構図試したいんスけど、好きな構図ってやっぱかぶっちゃうんスよね」
 あろまさんは周りを見渡して、確かにと零す。さすがによく撮る構図はバレてる。
 俺が笑って返すと、彼はカメラを下げてこちらに帰って来た。
「さて。そろそろお前寒くて音を上げるだろ、焚き火するか」
「おっついに焚き火。キャンプの醍醐味と噂の」
「お前には火をつける役目をやろう」
「まっかせて下さい、きっくんとのバーベキューで鍛えた腕見せてやりますよ」
 俺がからからと笑う、対してあろまさんは一瞬難しい顔をして、車の方に視線を向けた。俺からはその表情が見えなくなって、グッと喉が詰まるような感覚がした。
「あろまさん、」
「んあ? どうした」
 彼を呼んだけれど、既にその表情は元に戻っていた。呼んだ以上は何かを言わなければと、俺は口の中で言葉を転がして、それから苦笑した。
「…薪、まだトランクでしたっけ?」
「そうだぜ。これから下ろして準備だ」
「重労働…」
「ハハ、働け働け」
ケラケラと笑ったあろまさんに、ホッとしたような、不安なままのような。中途半端で足がつかない様な感覚。
けれど彼が言わないのに、聞く必要はあるだろうか。言われたくないから、何も言わないのではないか。
それならきっと、…俺も聞かないのが賢い選択なんだろう。
(……機嫌悪くすること言ってもな)
せっかく誘ってもらって来てるんだ、楽しくしてた方がいいだろう。そう、思うけれど。
(相変わらずこの人が考えてること、…俺にはわかんないな)
 この人に関係する、俺のことも。
 ひょっとしてひょっとすると、俺はそれをはき違えているのではないか、と思ったりする。それは何故か、と言われれば理由は簡単だった。
 この人の感覚と、俺の感覚がずれている様な気がするからだ。
(…俺はただ、この人が見る世界と、俺が見ている世界を見てくれるって言う事実だけで、それを口にしたんじゃないだろうか)

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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます!今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω`)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー! (2019年2月12日 0時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……! (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします!コメントありがとうございます! (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です!MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます! (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長閑 | 作成日時:2018年11月16日 2時

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