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秋の山とキャンプと彼と - 2 ページ22

ナビで車を走らせ2、3時間。途中何故か道に迷ったが、なんとか午前中にたどり着いた。
 このキャンプ場は、湖が近くにあり山々に囲まれている場所で、普段のざわざわとした街中とはまた違う雰囲気だ。人はいる為話し声や楽しそうな笑い声も聞こえるが、雑然とした雰囲気はなかった。
「うお、…さっぶ…」
 車から出ると、ビュウ、と風が吹き抜ける。かなりの重装備でいるのに、皮膚に当たる冷え切った山の風が体温を奪う。ネックウォーマーを引き上げて鼻まで覆う。もこもこの帽子を目深く被りこみ、耳を覆う。手は作業のため軍手をつけ、ちょっとだけ風が遮れた。
「…ふははっ、お前寒いの苦手か?」
 堪えきれなかったとばかりに笑ったのはあろまさんで、くっくと未だ笑いが零れている。
「夏より冬の方がマシ派ですけど、ンでも寒いんスよ…。前星撮り行ったことあって、その時も死ぬほど寒かったんでこれっス」
「はは、気持ちはわかる」
 そう、あろまさんは笑いながらキャンプ道具を下ろす。ここのキャンプ場はテント設営箇所の横に車を駐車できるため、大量の荷物を持って移動、なんて手間がなくて楽だ。
 二人で荷物を下ろし、あろまさんの指導のもとキャンプ道具を組み立てて行く。テントを立てて、机、椅子、焚き火台、タープを設営し、ちょっと一息。
「初めてキャンプ来ましたけど、かなり体力いるんスね…」
 テントの床に腰を下ろして息を吐く俺に、あろまさんは苦笑をこぼした。
「悪いな、手伝ってもらって。運転もして疲れてるだろに」
「いやいや。あろまさん一人にさせる訳ないじゃないスか」
 俺がそう笑うと、あろまさんが緩くはにかんだ。けれどそれは一瞬で、「そうか」という短い言葉と、「ありがとな」という言葉で締めくくられる。
(今の顔好きだな)
 笑わない訳ではない。彼はどちらかと言うとよく笑う人だと思う。ただ、なんだか、特別なような、慈しむとでも言えるような先の笑顔は、好きだ、と言えた。
(…あんまり見ない表情だったからか…?)
 釈然とせず、俺は首を捻る。彼は既に作業に戻っている。問いただす事でもない、単なる違和感。
 頭を振って考えを払うと、俺はカメラケースに手を伸ばした。

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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます!今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω`)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー! (2019年2月12日 0時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……! (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします!コメントありがとうございます! (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です!MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます! (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長閑 | 作成日時:2018年11月16日 2時

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