【ＭＳＳＰ】この愛の音を聞いて【男主】

彼らの最近の事情と距離感 ページ19

カタカタ、とキーボードを打つここは職場。隣のデスクにはいつものように猫谷が座っている。猫谷は時折スマホのレイアウトを確認しつつ、ＰＣと格闘を続けていた。
　俺も同じ様に作業を続けながら、それでいて口を開いた。
「猫谷くんやい」
「…なんだい虎渓くん」
「ＦＢパイセンが『最近構ってくれなくて寂しい〜』とか言ってたけど」
「っは、あ…！？ なんで虎渓が、…そうか、この間あろまの企画で同行したのか…」
「そそ。…んで、どうなんです？」
「べ、別に、特に、そういう…」
「特筆することありそうですねぇ」
　ニヤリと笑って俺が言うと、猫谷は手を止めて少し恨めしそうに俺を見る。そうして少し天井を仰ぎ、真剣さと気まずさが混じった顔で再度俺を見た。
「……後で時間ある？」
「よろしくってよ」

「…で、その…なんていうか、言い難いんだけど…」
　昼休み、職場近くのコーヒー店の角の席を陣取り、俺と猫谷は頭を突き合わせていた。
「…実は、この間…ＦＢと、その、」
「おっついにキッスから進みました？」
「……なんでそういう所だけは本当察しがいいかな……」
「ってことはひょっとしてセッ」
「いや」
　俺の言葉を猫谷が遮る。そうして、じわじわと顔が赤くなっていくのを目撃した。
「…そこまでしてない…んだけど」
「…ひょっとして…、その時は割と楽しくてノリノリだったけど後で急に恥ずかしくなってきて中々顔が合わせづらいヤツ？」
「だからなんでそういう所だけは本当察しがいいかな…！」
「図星かよ！ えーそういう話はＦＢパイセンと直に解決してよ…もういっその事やっちゃえよ」
「勘弁して…！ …俺どれだけこじらせてると思ってるの」
「いや教えてもらってないから知らないけどね…まぁ、だからこそ言ったら？ いまさらじゃん」
　あっけらかんにそう言うと、猫谷は困ったように視線を逸らし、顔を覆う。
「さすがに…嫌だと思わない？」
「大丈夫だって、ＦＢパイセン猫谷にゾッコンだから」
「そ…！ …んな、事ないでしょ…」
「そう言うなら嬉しそうな顔しなさんな」
　猫谷はやはり恥ずかしそうに顔を覆い、「そうだね…」とか細く言葉を吐いた。

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