この微妙な距離感 - ５ ※Ａ ページ11
椅子に座り、机の真ん中にチャーハンと取り皿。
お互いに欲しい量をとって、スプーンですくい上げる。ほっかほかの米からは湯気が立ち上り、少し焦がしたおかげで醤油の香ばしい匂いがする。
少し冷まして口に運ぶ。軽く噛むと醤油の香ばしさとコショウにあたって辛味が広がる。しかし数度噛んでいれば、米の甘みがじんわりと口の中に広がり、あとからふわりとだしの味もする。
「うんうん、マシな味がする」
先に満足そうに頷いたのは虎渓だった。それに俺は苦笑する。
「マシな味って。うまいと思うけど、いつもこうじゃねぇの？」
「分量図ってないんで、毎度味付け違うんスよね。濃かったり薄かったり」
「ハハッ、図ってないとそうなるわな」
「そうなんスよ。下手くそなんだから図れってきっくんには言われるんスけど、めんどくさいじゃないスか」
心底面倒臭そうな顔をした虎渓に笑いながら、俺はチャーハンを口に運ぶ。うん。うまい。
実際結構うまいと俺は思うんだが、虎渓からしたらそうでもねぇのかな？ きっくんはうまいけど、ＦＢはそうでもねぇしな、比較対象はいると思うが。
考えながらもぐもぐと咀嚼していると、もも肉が歯にあたった。軽く噛んだだけでほろりと崩れ、歯の間で擦り切られ、じゅわっと肉汁が出た。俺は「ん！？」と思わず声を上げてしまった。
「なんか肉柔らか？」
「あ、気づきました？」
悪戯が成功した、みたいな顔して虎渓が笑う。
「これ実は近々やろうと思ってた唐揚げ用のお肉だったんスよ。だからちょっと揉み込んでつけておいたんで、柔らかいでしょ」
「ま、マジか…柔らか…お前ヘタとか嘘だろ」
「嘘じゃないスよ。マジです」
「…お前の唐揚げも食いてぇなぁ」
「いっスよ？」
あっさりと許可が出て、俺のほうが困惑してしまった。
「今度コスモス撮りに行きましょうよ。近くでコスモス畑が来月の上旬から中旬くらいに満開らしいんで。そん時にお昼か夜ご飯か、しましょう」
そう笑った虎渓に、俺はやんわりと笑みを返して、頷いた。
食べ終わると、先に寝てていい、と寝室に通された。だからそういうところ。ちゃんとガード固めてくれ。ベッドに控えめに腰掛け、しかし満腹感もあり息を吐きながら盛大に寝そべった。
「あ」
仰向けでベッドに転がった俺の視界に、ひまわりが見えた。
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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます！今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω｀)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー！ (2019年2月12日 0時) (
レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……！ (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします！コメントありがとうございます！ (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です！MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます！ (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長閑 | 作成日時：2018年11月16日 2時
