本日は曇のち雨、らしい - ２ ページ2
結局行くことになった。
動物ものの映画はやっぱり涙腺に来て、俺は映画館入口向かいのベンチに座ってハンカチで顔を抑えていた。
「…わんこ…」
「…大丈夫かよ？ あったかいお茶買ってきたぞ」
「ｱｻﾞｽ…」
「お前、それで遠回しに行くの嫌って言ってたんだな」
「あっ気づいてたんスね。ゴリゴリ押してくるから俺てっきり伝わってないものとばかり」
「伝わってるっつの。…そういうの気にしねぇのに。そういう感受性豊かなところ、お前のいいところだろ。隠すもんじゃねぇと思うが…」
「……それ猫谷にも言われましたわ。…けど、さすがにもういい大人が家ならまだしも映画館でボロ泣きはやべーっスよ」
「誰も見てねぇって」
くつくつとあろまさんは笑う。そうして俺に買ってきてくれたのと同じお茶に口をつけた。
「まぁ、今度からチョイスは考えるわ。つか、むしろお前が言ってくれりゃいいんじゃ？」
「……考えておきます」
「そうしてくれ。…んじゃ、昼飯でも食いに行くか？」
「…そうしましょう」
そうして時間は流れて、帰り道。俺たちが電車を降り、駅を出た少しのところで地面をぽつぽつと雫が叩き始めた。
「うわ、雨…」
「傘持ってこりゃよかったスね。…しまったなぁ、車出すべきでしたね、俺」
「俺が電車でって推したんだからいいって。んな気にするもんじゃねぇよ」
鈍色の重たい空から、ざぁっ、と白い筋が降り注ぐ。雨脚は急激に強くなり、俺たちは慌てて雨をしのげる場所へと避難した。
ざあざあと降り注ぐゲリラ豪雨に、鞄の雨粒を払いながら俺は空を見上げる。止めばいいなと思いながら、しかし止む様子のない雨に、俺は少しばかり思考を巡らせ、同じく屋根の下に入り、髪や鞄の雨を払うあろまさんに眼を向けた。
「あろまさん、俺ん家行きましょう。たぶん、あろまさん家より近いと思うんで…」
「はっ？ …いや、けど…」
「それで風邪引いたら元も子もないスよ。近々企画もありますし…何より風邪引いたらしんどいスから」
行きましょう、と、半ば強引に腕を掴み、俺は走り出した。
本日は曇のち雨、らしい - ３ ※Ａ→←本日は曇のち雨、らしい
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長閑(プロフ) - PONKANさん» コメントありがとうございます！今作は特に表現に気を使って書いているつもりなので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω｀)読んで下さってありがとうございます。ゆっくりですが今後も更新していきますので、どうぞ気長によろしくお願いしますー！ (2019年2月12日 0時) (
レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
PONKAN(プロフ) - 唐突に失礼します…好きです……表現の仕方とかめっちゃ尊いです……正直一生読んでたいくらいです……応援してます……！ (2019年2月11日 23時) (レス) id: b094142359 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 魔塩さん» 読んでくださってありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。今後もゆっくりですが更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします！コメントありがとうございます！ (2019年1月8日 21時) (レス) id: 90c3880b48 (このIDを非表示/違反報告)
魔塩(プロフ) - 更新お疲れ様です！MSSPの軍パロから長閑さんの小説を知り、ファンになりました。今回の作品も面白くて読むのが楽しいです。応援してます！ (2019年1月8日 1時) (レス) id: ac83d9c582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長閑 | 作成日時：2018年11月16日 2時
