【ＭＳＳＰ】この愛の音を聞いて【男主】

本日は曇のち雨、らしい ページ1

『虎渓、映画見に行こうぜ』
　ポン、と来たのはその言葉。俺はコンビニおにぎり片手にスマホを手に取った。
「…猫谷、これってデートのお誘い？」
「んっ、ぐ、…え？ …なに、急に」
　サンドウィッチを咀嚼していた猫谷が軽くむせ込み、そうして怪訝な眼を俺に向けてきた。
「いや、これ」
「……あぁ、うん…、そうなんじゃない？」
　しばしの熟考の後、猫谷は頷いた。
「あー、うぅん、そうだよねぇ」
「…どうしたの」
　猫谷にあろまさんとの事は既に伝わっており、彼もそれを理解した上での問いだった。
「…いや、なんて言うか…」
　送られてきた映画の内容を見せる。そうして猫谷は納得、という顔で大きく頷いた。
「動物ものね…弱いもんね動物もの」
「俺さぁ…ホント無理なんだよ動物もの…。動物ものに限って感動ものだからさ…クッソ泣いちゃうから無理なんだよ…」
「前休み時間に見てて泣いてたのはなんだっけ」
「あれは違う。あれは最近ハマってるソシャゲの最終章クリアしたから。世界救ったから」
「あぁゲームか。…んん、まぁいいんじゃない？ 一応言っておけばそれでも」
「クッソかっこ悪いじゃん俺…」
　はぁあ、と大きなため息を吐き出す。猫谷はお茶に口を付け、飲み込み、口を開く。
「まぁ…いいんじゃない？ 映画ってそういうものだと思うし、大体虎渓の表情が騒がしいのは割といつもだし…」
「なんか軽くディスられたね俺ね」
「でも、…そういう所虎渓のいい所だと俺は思ってるし…、感受性豊かっていうの？ 虎渓の豊かな感性だから、らしい写真が撮れるんだろうし…、悪いことじゃないと思うよ」
「…………猫谷が俺の事褒めてる」
「……俺虎渓の事は割と高評価だよ」
「唐突にぶっ込んで来るのやめてください！」
「そこまで…」
　マジかよこんな時になんでぶっ込んでくんの猫谷くん強か過ぎかよ。
「…猫谷くん唐突にぶっ込んでくる癖になんでパイセンとは喧嘩しちゃってたのさ…」
「…そんな感性豊かな癖になんで恋愛に関してだめだめなの？」
「……この話題、やめよっか」
　乾いた笑いを零しながら、俺は持ったままだったおにぎりにかぶりついた。

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