思い出の欠片 ページ20
不意に、思い出すことがある。
戦場で見る空は、いつもくすんで、赤黒いような色だった事。
子供の頃から、夕焼けの光が、偉そうな貴族より一番嫌いだった事。
自分を育ててくれた人の事。両親のことは、知らない。
研究所のかび臭くて小汚い部屋の天井。
くすんだシーツの色。
手を伸ばすととどいた、鉄格子の冷たさ。
出撃以外にいつも数えていた壁のシミの数。
支給されていたパンの味。
投薬部屋の医療品のにおい。
研究者たちの気味の悪い笑み。
窓の外に見えた緑色の木々。
あの自然の中にいられたら、と何度も思っていた。
だけど自分がいられるのは戦場で、自然を焼き払い、街を壊し、人を壊すだけの作業だった。
他と交流することもない、鮮血のような髪を揺らす俺。
いつしか戦場での呼び名は<赤狼>だった。
深緋の髪を揺らし、敵軍の赤を浴び、たった一人で敵を壊滅させるから。
あの軍から去り、いまの軍で、俺は…
黒い影が手を伸ばしてくる。
服装は見慣れた白く赤と黒に汚れた白衣。
だめだ、あの手に掴まったら。あの手に掴まったら、俺は、また……!
「……いや、だ……!!」
思わず、手が相手の首へ伸びた。
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長閑(プロフ) - ありがとうございます!優しい皆様を支えに頑張りますね!本当にありがとうございます! (2014年12月29日 14時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - 凄く、好きです!面白いです! 情景が浮かんでくるような文章で、読んでいてドキドキします!! (2014年12月29日 14時) (レス) id: f6373ac006 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - ありがとうございます!年末近いですが全力で頑張ります! (2014年12月27日 23時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
春夏秋冬あさよ(プロフ) - 凄く面白いです!夢中で一話から読んでしまいました!更新楽しみにしています!! (2014年12月27日 22時) (レス) id: 2eb841fda8 (このIDを非表示/違反報告)
野狐(プロフ) - 今後どうなって行くかが楽しみです!次の更新まで気長にまってまーす! (2014年12月27日 11時) (レス) id: cd814794a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長閑 | 作成日時:2014年12月21日 14時