墜落 ページ17
「……い、てぇ」
肺腑に溜まった息を吐き出しながら、俺は呟いた。
ぱらぱらと小さな瓦礫が頭の上やら足の上やらに降ってくる。
鬼さんを抱え込んで、背を地面に向けていたらすごい勢いで衝突した。
爆音を聞いたせいで耳が若干いかれた。全身びきびきして痛い。
「鬼さーん、生きてますか…？」
呼吸はしている。ただ、落ちた衝撃で意識がとんだみたいだった。
まぁ、俺が下敷きになったし、耳は塞いでおいたから致命的な怪我はないだろう。
「…あーそういえば、戦場見取り図見てた時、元々鉱山の町だったとか言ってたなー…」
だからこんなに深い穴できちゃうんだよ。
そんなことをなげやりに考えながら、俺は鬼さんを抱えたまま起き上がった。
「あー…敵いるわ…」
まぁ、西軍がいるこの場で、あれで俺が死んだとは思わないだろうし当然か。
鬼さんを抱え直して、ナイフを構える。
(俺が、かばいながら戦えるか？)
だが、そこらに寝かしておく事もできないだろう。
(やるしかないか)
発砲音。右。前へ跳んだ。踏み込む。
ナイフで弾き飛ばして、弾丸同士を衝突させる。角度を変え、弾丸は銃を持つ敵達へ飛来する。
驚愕で揺らいだ隙に踏み込んで、俺はナイフを振るう。
いつもより体が重い。当然か。人１人分、体重が加算されているのだから。
「っく、そ」
踏み込み、振るう。
守って戦う事に、何か意味があるのか？
そう、思考の端が考えた。死にかけではない。ただ、意識がないだけ。
だがそれでも、今現在俺にとって荷物なのは確かだ。
「……！」
小さく舌打ちをもらす。スピードがイメージと合わない。
ナイフが弾き飛ばされた。銃の引き金が目の前で引かれる。
(……死ぬか？)
((…死ぬ気は、ねぇだろうな))
そう言われた。ないと答えた。
状況は悪い。だが、諦めない声が通信機から聞こえる。
『あと５分でそっちに到着する。持ちこたえて』
隊長さんの声だ。
『穴の中じゃ俺の活躍場所無くない？！』
『言ってないで走るべ！』
狙撃手さんの声か。確かにとどかないね。
「……はは」
戦場だというのに、この人達は、まったく。
ちから抜けるよ。こんな人達のところにもっと早くいたら、ひねくれずにすんだかもね、俺。
「終わりだ」
男が愉悦の笑みで引き金を引こうとする。
そうはいかない。せめて、この人は、そうはさせない。
鬼さんを抱え直して背を向けた俺と、死の弾丸を遮ったのは、鋼鉄の刃だった。
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長閑(プロフ) - ありがとうございます！優しい皆様を支えに頑張りますね！本当にありがとうございます！ (2014年12月29日 14時) (
レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - 凄く、好きです！面白いです！ 情景が浮かんでくるような文章で、読んでいてドキドキします！！ (2014年12月29日 14時) (レス) id: f6373ac006 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - ありがとうございます！年末近いですが全力で頑張ります！ (2014年12月27日 23時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
春夏秋冬あさよ(プロフ) - 凄く面白いです!夢中で一話から読んでしまいました!更新楽しみにしています!! (2014年12月27日 22時) (レス) id: 2eb841fda8 (このIDを非表示/違反報告)
野狐(プロフ) - 今後どうなって行くかが楽しみです！次の更新まで気長にまってまーす！ (2014年12月27日 11時) (レス) id: cd814794a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長閑 | 作成日時：2014年12月21日 14時
