参戦 ページ14
戦場のにおいが克明に漂ってくる。
砂埃と粉塵が舞い上がり、鼻孔を刺激する。
俺はフードをかぶり込んで、口元まで布を引き上げた。
黙りこんでいる俺の隣に並んだ鬼さんが、俺を鋭い目つきで見る。
「おい、緊張してんじゃねぇぞ、ナノ」
「……緊張はしてませんけど…」
「…まぁいいが、ちゃんとしろよ」
そういえば、となんとなく口を開いた。
「あの、鬼さん」
「あ？ …って、鬼さんってなんだてめぇ…」
鬼さんのじとりとした眼を流しながら、言葉を続ける。
「鬼さんが俺を警戒するのは、隊長さんたちに危害を加えるかもしれないから、ですか？」
「はぁ？ 自分に起きたことくらい自分でやれやって話になるに決まってるべ。気になんてしてないし、意味分からないこと言ってんじゃねぇべや」
「凄く早口ですね」
まくしたてられた事に軽く「はは」ともらして、俺は戦場へ視線を向け直した。
「…とにかくだ。おれの事は……あろまでいい」
「え？ ……えっと」
「あろま！」
「…あ、…え？」
「…マジカス、まさにカス…」
ちっ、と派手に舌打ちされた。え、俺が悪いの？
「あろまって呼べって言ってるべや、耳ねぇのかてめぇは！」
「…あ、ろ…ま？」
「あ・ろ・ま！」
「…あろ、ま」
「…おれのことは？」
「……鬼さん」
ぴき、と怒った顔をして、結局はそっぽを向かれた。ちょっといじりすぎたかな。元々短気な気はあるし。
通信機から司令さんの声が聞こえてきて、進行の合図が出た。
さて、戦闘開始か。
俺はグローブ越しに握るサバイバルナイフの感覚を確かめながら、目の前に広がる戦場と、その先にいるであろう北軍を見据えるべく視線をあげた。
「…おい、ナノ」
「はい。…なんですか」
「……背中、預けるぞ」
「……はい。…俺の背も、預けていいですか？」
「あぁ」
妙にはっきりした声で、鬼さんはそう言い、跳んだ。隊長さんは先行している。
『安心してねー』
「…狙撃手さん？」
『俺の事はふぶでいいって。みんなふぶって呼ぶし、そう呼んでほしいな！』
「……善処します」
踏み切り、跳び出す。鬼さんの後を追いかけながら、狙撃手さんと話す。
『背中はあろまだけじゃなくて、俺達も守るからね』
『俺もいるよー』
「隊長さん」
『この俺！ 漆黒の堕天使もいるから安心するといい！』
「……安心要素皆無なんですが」
軽くあしらいながら、俺は進む。鬼さんが敵と接触したと通信機が告げる。
ナイフを握りこんで、踏み込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 180人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長閑(プロフ) - ありがとうございます！優しい皆様を支えに頑張りますね！本当にありがとうございます！ (2014年12月29日 14時) (
レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - 凄く、好きです！面白いです！ 情景が浮かんでくるような文章で、読んでいてドキドキします！！ (2014年12月29日 14時) (レス) id: f6373ac006 (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - ありがとうございます！年末近いですが全力で頑張ります！ (2014年12月27日 23時) (レス) id: b1fbb6f323 (このIDを非表示/違反報告)
春夏秋冬あさよ(プロフ) - 凄く面白いです!夢中で一話から読んでしまいました!更新楽しみにしています!! (2014年12月27日 22時) (レス) id: 2eb841fda8 (このIDを非表示/違反報告)
野狐(プロフ) - 今後どうなって行くかが楽しみです！次の更新まで気長にまってまーす！ (2014年12月27日 11時) (レス) id: cd814794a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：長閑 | 作成日時：2014年12月21日 14時
