いとおしいね、

帰る場所 ページ49

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久しぶりの冬道は走りずらくて、どうにも前に進んでいる気がしない。

呼吸をする度に白い息が宙をふわふわと舞う。今はそれすらも煩わしい。

冷たい空気が、走って火照る体に溶け込んでいくのが気持ちいい。


早く、早く帰ろう。気持ちはそれでいっぱいだった。



実家から｢年末に太志も帰ってくるから｣という連絡がきて、私も予定を合わせたのだが、結局一日遅れの帰省になってしまった。

ムカつく上司は心の中でぶん殴ったし、｢早く帰れるように｣と手伝ってくれた同僚には今度焼肉を奢る約束をした。


久しぶりに家族四人が揃う。それが嬉しくて仕方ない。お土産はきちんと片手に提げている。


やっと見えてきた実家に気持ちが高ぶって、髪が乱れるのも気にせずにスピードを上げた。

少し呼吸を整えて玄関のドアを開ければ、懐かしく感じる家の匂いが私を包む。冷たくなった鼻先や指がじわじわと温かくなって痺れた。


靴を脱いで、家に上がる。明かりが眩しくて、思わず目を細めた。

ふと、一番に太志と目が合う。



｢おかえり、A。｣

｢ただいま、太志。｣



可愛く笑って言ってくれた太志に、私も笑顔で返す。

お土産をそっと下に置いて、それから背負っていたリュックを放る。両腕を広げて待っていてくれた太志に飛び込んだ。

難なく受け止めて、｢つめた〜｣という太志の頬に両手をピトッとつければ、その上から太志の手が重なる。温かい。

じわじわと満たされていく心に、私も太志も笑い合った。









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