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｢いやあ、奢ってくれてありがとね〜｣
｢元々そのつもりだったくせに、わざとらしいな。｣
｢払おうとしたのを止めたやつがよく言うよ。｣
｢散々金が無いから奢れって言ってたやつが財布出してたら驚くだろ。｣
いざとなればカードもあった。というか、財布からカードを抜き出そうとした時に手で止めたのは志摩だ。ちなみに伊吹の分は後からしっかり返してもらうと、伊吹を肩で支えながら言っていた。
店の外に出ると、夜の冷たい風が鼻の奥でツンとする。隣に立つ彼の横顔を町の明かりが照らしていて、とても綺麗だ。
緩やかな癖毛と落ち着いた声、彼なりの優しさが変わっていないことを感じて、静かに息を吐く。
それでも4機捜になってから、彼は変わった。内側の、奥の方。それは4機捜の人たち、きっと伊吹によって。それが嬉しい反面、寂しいとも思う。
こうやって自分の知らないところで、志摩がどんどん変わっていくのだ。
｢タクシー、まだかかるの？｣
｢もうすぐかな。Aは徒歩？｣
｢うん。そんなに遠くないし。｣
｢気をつけて帰れよ。｣
｢…仮にも警察だから平気。｣
｢酒飲んでるのに何言ってんだ。｣
たくさんの時間が過ぎて色んなものが変わっていく中、志摩の変わらないところを見つけた時に胸が苦しくなる。
タクシーが前の道路に止まって、ライトがチカチカと二人を呼んでいる。もう来てしまったのか。
伊吹を奥に押し込んだ志摩は、こちらを振り返る。
｢じゃあ、また。｣
｢うん、またね。｣
ひらりと軽く手を上げて、タクシーに乗り込んだ。そのタクシーは他の車に紛れてどんどん前へ進んでいく。
思いにもよらない再会、呆気ない別れ、中途半端に取り残される気持ち。いっそ、私の中にいる"志摩一未"がいなくなればいいのにとさえ思えた。
目に痛いくらい輝くライトから逃げるように深い瞬きをして、私は帰路につく。
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みず。(プロフ) - 樹さん» はじめまして！たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます…！励みになります！！ (2020年10月11日 17時) (
レス) id: 8c2fd9630e (このIDを非表示/違反報告)
樹 - はじめまして。菊の花に縋る、MIU夢の中でも一番に好きな作品です。初めから読み直しては毎回志摩さんと主人公さんの距離にきゅんとしています。評価の星が複数回押せないのがもどかしい！続き楽しみにしています。 (2020年10月11日 8時) (レス) id: c294f25bdb (このIDを非表示/違反報告)
みず。(プロフ) - リトルバードさん» はじめまして！とても嬉しいです…！ありがとうございます！！ (2020年10月6日 20時) (レス) id: 8c2fd9630e (このIDを非表示/違反報告)
リトルバード(プロフ) - みず。さん、はじめまして！主人公ちゃんと志摩さんの微妙な関係がすごく現れていて読んでてキュンキュンしました！更新楽しみにしています！ (2020年10月6日 18時) (レス) id: fd0b490cca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：静 | 作成日時：2020年9月21日 23時
