検索窓
今日:27 hit、昨日:24 hit、合計:194,434 hit

ページ47

.









「子供って怖い……」

「Aさん、たくさん斬られてましたね…」

「うん…もう、ゆたかくんが楽しければそれでいい……」

「…お疲れ様です」


散々斬られ、満足そうなゆたかくんから休憩の許可を得た私は再びアルコールに癒される。酒と麦さんの優しさが沁みて、私泣いちゃいそう。げっそりした私を見て笑う志摩と伊吹は許さん、ゆたかくんに斬られてしまえ。

桔梗隊長が刀で遊ぶのをやめたゆたかくんの元へ行き、コップに入ったオレンジジュースを渡す。可愛らしい親子だ。麦さんと私は顔を合わせて"可愛いね"と口にする。どこまでも平和な時間だ、居心地がいい。


「ゆたか、コップ傾いてるよ。零しちゃ…っあ!」

「わっ!!」

「ハムちゃんティッシュと布巾とってー!」

「はいっ!」


鮮やかなオレンジが宙を舞い、床に落ちた。しゅんとするゆたかくんを伊吹が慰め、志摩と桔梗隊長が麦さんの持ってきたティッシュと布巾を使って床を拭いていく。二人とも手際が良くて、傍から見ればその様子はまるで夫婦だ。あっという間にオレンジジュースは消えてなくなった。
本当に、いつまでも片想いを続けてる自分が惨めに思えるほどお似合いだ。あんな二人をずっと見ていると、自分と志摩がどうにかなるなんて有り得ないと実感してしまう。

いつまでも同期で、いつまでも仕事仲間で、私が早いところ諦めてしまえば全て解決する。わかっているけど、しぶとい私の想いはそうさせてくれない。この歳になって、嫌になるな。

缶を傾け、残り僅かのビールを飲み干した。溜息をそれと一緒に押し込むのと同時に着信音が鳴る。近くに座る麦さんと自分にしか聞こえないくらい控えめな音だ。麦さんに断りを入れてリビングから出る。

スマホの画面を見れば、"我孫子豆治"の文字。ああ、この字の並び、好きじゃない。一体なんの用だろうか。渋々だが電話に出る。


「もしもし、Aです。珍しいですね、どうかしまし、…………はい?」









.

・→←ひとりよがりは夜にして



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (122 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
380人がお気に入り
設定タグ:MIU404 , 志摩一未 , 伊吹藍
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みず。(プロフ) - 樹さん» はじめまして!たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます…!励みになります!! (2020年10月11日 17時) (レス) id: 8c2fd9630e (このIDを非表示/違反報告)
- はじめまして。菊の花に縋る、MIU夢の中でも一番に好きな作品です。初めから読み直しては毎回志摩さんと主人公さんの距離にきゅんとしています。評価の星が複数回押せないのがもどかしい!続き楽しみにしています。 (2020年10月11日 8時) (レス) id: c294f25bdb (このIDを非表示/違反報告)
みず。(プロフ) - リトルバードさん» はじめまして!とても嬉しいです…!ありがとうございます!! (2020年10月6日 20時) (レス) id: 8c2fd9630e (このIDを非表示/違反報告)
リトルバード(プロフ) - みず。さん、はじめまして!主人公ちゃんと志摩さんの微妙な関係がすごく現れていて読んでてキュンキュンしました!更新楽しみにしています! (2020年10月6日 18時) (レス) id: fd0b490cca (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年9月21日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。