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足音を雨に紛らわせて、犯人を見たというA2倉庫付近に向かう。
銃を握る手が酷く冷たい。今まで生きてきたどんな時よりも緊張していた。彼が私の肩に手を置いて、"俺と組んだ初日より緊張してる"と笑いながら言う。そりゃそうだ。夢であっても、貴方の命が懸かっているのだから。夢の中でも、彼の手は温かかった。


「…見つけた、行くぞ。」

「いえ、もう少し待ちましょう。」

「は?……こっちに来るんだぞ。それに銃を持ってるなら尚更、」

「もうすぐ応援が来ます。それまで持ち堪えられれば良い。私たち二人で確保するのは難しいです。」

「だから…、あいつは銃を、」


「奴の所持する銃の残りの弾は、一発だけ。」

「……っなに、言って…なんで、それを知ってる?」


"ただの勘じゃないだろ"、驚いた顔でそう言った彼に私は頷く。
そうだ、勘でもなんでもない。私は鮮明に覚えているのだから。あの日彼が撃たれた後、犯人は私を狙って再び撃ったが軽い音しかしなかった。だから、私は生きている。


「私は、貴方が生きていればそれでいい。」

「……A?」

「あの日できなかったことを今できれば、お互いに救われる気がするんです。」

「ちょっと待てって、状況がよく…、」

「貴方は生きるべきでした。…私なんかよりも、ずっと。」


彼の目を真っ直ぐ見て言う。私を庇ったのは、あの日の貴方の判断ミスだ。本当に生きるべきは、貴方だったんだ。
これは彼を救うためであり、私の贖罪である。

近づいてきた足音の方向に飛び出した。彼が私の腕を掴もうとするが、空を切る。


黒い服の男がゆっくりと銃を構えて、指を動かした。









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みず。(プロフ) - 樹さん» はじめまして!たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます…!励みになります!! (2020年10月11日 17時) (レス) id: 8c2fd9630e (このIDを非表示/違反報告)
- はじめまして。菊の花に縋る、MIU夢の中でも一番に好きな作品です。初めから読み直しては毎回志摩さんと主人公さんの距離にきゅんとしています。評価の星が複数回押せないのがもどかしい!続き楽しみにしています。 (2020年10月11日 8時) (レス) id: c294f25bdb (このIDを非表示/違反報告)
みず。(プロフ) - リトルバードさん» はじめまして!とても嬉しいです…!ありがとうございます!! (2020年10月6日 20時) (レス) id: 8c2fd9630e (このIDを非表示/違反報告)
リトルバード(プロフ) - みず。さん、はじめまして!主人公ちゃんと志摩さんの微妙な関係がすごく現れていて読んでてキュンキュンしました!更新楽しみにしています! (2020年10月6日 18時) (レス) id: fd0b490cca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年9月21日 23時

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